2 頭の中で段取りを整えている間に牛車は、東三条殿へと着いた。 先を行く女房は道長から聞いているのか、何も言わずに寝殿へと案内してくれている。 主催とあって、屋敷の中からは慌ただしい印象を受ける。 「殿、お連れ致しました」 「おお、待ち兼ねたぞ」 「遅くなりまして」 優雅な動作で膝を折り、深々と頭を下げる。 「妙な事を頼んですまないな」 「いえ」 「それにしても見違えたぞ」 道長に用意してもらった衣装をまとい、髪に少々細工をし、ほんの少し化粧も施したその姿は、女性だと言われればとりあえず納得してしまうだろう。 「とにかく、姫達の護衛は任せたぞ」 「かしこまりました」 深々と頭を下げると、道長は満足した様に頷き、立ち上がった。まだやらなければならない事があるのであろう。そのまま奥へと消えていく。 「ここまで来たら、帰りたいとは言えないな」 先ほど案内してくれた女房の先導で、時間まで控えの間で待つことにした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |