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護衛編1


「…………急病にしたい」

目の前に広がる光景に、思わず回れ右をしてしまいそうになる。

『受けたのはお前だろう』

呆れ気味の傲越の言葉に、ぐっと押し黙る。

それでも左大臣道長から届けられた衣装を見て、諦めきれず大きく一つため息をついた。

「そろそろ支度を始めないと間に合わないぞ」
「勾陣様……」
「迎えの牛車が来る前に着替えをすませておかなければならんのだろう?」
「俺の天貴が手伝ってやると言っているんだ。早くしろ」
「朱雀、そのような言い方は……」
「天貴がやめろと言うならやめる」

着替えの手伝いとして晴明が指名したのは天一。もちろん、もれなく朱雀がついて来ている。

「さっさとやってしまえ」
「傲越。また勝手に………」
「だいたい、初めてじゃねぇだろ。今更、うだうだ言うな」

尾を一降りして明後日の方向を見ながら言う傲越を見て思う。

「お前、面白がってるだろ」
「……くだらん事を言うな」

図星らしい。
後で仕返ししてやると心に決め、内心渋々、天一に向き直る。

「天一様。申し訳ありませんがお手伝いをお願いします」
「はい。では、初めましょう」

本当に渋々、天一と勾陣に手伝われ、朱雀に睨まれながら着替えを終わらせた頃、屋敷の前に迎えの牛車が止まった。
それに乗り込み、憂鬱な気分のまま、東三条殿へと向かった。



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