鍵 手を伸ばせばすぐに届く所にそれはあった。 ただ、それを手にした所で何かが変わるかは分からなかったし、変わったとしても良い方に向かうかどうか。 (疲れた…) 薄暗いそこは唯々私の疲労感を増長させていき、時を得る程に思考は単調なものになるばかりだ。 このままこの薄暗い空間が僅かに輪郭を見せたり隠したりするのを見ていてもどうしようもないことは分かっていた。 それでも動かなかったのは、同情心(まだそんな高等な思考が残っていたのか)のため。 (…もう、良いかな) たぶん、日差しの強さくらいは変わってくれるだろう、と。 「それを持って、貴方は何処に行こうと言うのですか」 最早輪郭しか見えないその人は、空気を察したのか唐突にそう切り出した。 (かわいそうに、) 「貴方に一体何が残っていると言うのです」 お前はそうして私の行く先に僅かの光があることを知らせてしまうのを分かっていないのか。 滲む影が俯かせていた顔をそっとあげる。 「…貴方には、何が残っているのですか」 見えないはずの目がちらりと光ったように見えた。 ああ、分かっているのかも知れない。 (お前も変わるか変わらないかの瀬戸際を歩いているのか) 私はそれを手にすることをやめた。 (なあ、代わりにお前の心の鍵を開けてはくれないか。) end なんという怪奇文ww 本当は太子は妹子を置いて出て行く予定でしたが、妹子が必死すぎて… 途中からはもう、お前ら勝手に動くなしっていう。 てか…あれ?名前1回も出てきてない? [次へ#] |