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「なんじゃ、今日は随分と機嫌がいいのう」


火影様から任務を受け取り、特に急ぐものでもないので軽く談笑していれば、火影様は優しい表情で私にそう言った。

特にいつもと違うつもりはない。
いや、でもやっぱり機嫌がいいのかもしれないと思い直す。



『そう、見えますか?』

「あぁ、今日はいつもより笑顔が柔らかい。」


どこか嬉しそうな火影様の顔。
私の小さな変化にも気づいてくれる火影様の優しさに恥ずかしくもあり、ただ嬉しかった。



『…彼に、出逢ったんです。』

「彼?」


きっと私の機嫌がいい理由はそれだろう。
いやむしろ、それしかない。

それ程私にとって驚きで、嬉しかったことなのだ。



『火影様には話しましたよね、私が此処に来た理由を…』

「……お主が、犯した罪の話しじゃな?」


火影様は私の言葉に一瞬悲しそうに目を伏せたが、すぐにいつもの柔らかな瞳で私を見た。

私の罪ですら包み込もうとする火影様は、どこまでも温かくて、少し苦しい。


『火影様にお話した通りに、私はこの世界の行く末を少し…知っていました。


私が罪を犯し、この世界に渡って来なければ…私とは違う者が九尾の人柱力に選ばれていたでしょう。』



でも、私は此方の世界に来てしまった…



『私が現れたことにより、その者は存在自体が消えてしまったと…

私はまた罪を犯してしまったのだと、思っていました。』


初めて自我が芽生え、全てを思い出したとき、私は彼を探そうとはしなかった。


この世にいない彼を探すのはあまりにも寂しくて…
白日のもとに曝されるであろう自分の罪が、私には耐えきれなかった。



『…でも、彼はいたんです

この世界に。』


「その者は…いや、


………お主の罪が、ひとつ消えたのじゃな。」


火影様のその言葉に、本当に私の罪が1つ消え去ってしまったかのように、心の中が少し軽くなった気がした。






少しは自分を、赦してもいいのだろうか…

思いを1つ進めても、いいのだろうか…



『…今はただ、彼が愛しくて



私が彼を護りたい。』


“うずまき ナルト”


私を救ってくれた人


******


盗み聞きをしようと思った訳じゃない。
ただ普通に部屋に入ろうとしたのに、なんだか真剣な話しになっていたから、外で待っていようと思っただけだ。

火影の執務室から聞こえる声は2つ。



『…今はただ、彼が愛しくて』


2人はあまり大きな声で話している訳ではないのか、会話はくぐもってあまり聞こえない。
しかし彼女のその言葉だけは異様なほどはっきりと耳に届いた。


扉から無意識に一歩後退り、それが合図となる。

その場から逃げ出すように走り出した俺を引き止める者はいなかった。





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あきゅろす。
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