夏は暑いし大佐はエロいし。2
とりあえず、方針は決まった。
今夜、鋼のと私は、セックスをする。
ただでさえ法律に抵触しているのに、子供相手に軍の中で致すとか、連れ込み宿にしけ込む訳にもいかない。私と寝る気満々の子供を連れて、自宅まで戻って来た。互いに中途半端に夕飯を済ませていた為、何の障害も無くここまで最短距離で到着してしまった事は、喜ぶべきか悲しむべきか。
何時もは一人で帰宅する部屋に、今日はオマケ付きで戻る。彼を自宅に入れるのは初めてだ。部屋に入ってから、子供はやや落ち着きがない。
「まさか、君に体を狙われるとはね。いくらモテる私といえども、今後は多方面に気を付けなくては」
「うっせ。自惚れんな」
「少し休もうか」
「さっさとやろうぜ。色気はいらねえ」
コートを掛けながら様子を見る。鋼のは軽口を叩けるくらいには、未だ余裕がある様だ。
「先にシャワー浴びるか?」
「必要か?そういうの」
「君がそのまま、体の何処を舐められても平気なら、私は構わないが」
「借りる!。どこだ!」
笑いを堪えながら、シャワーを浴びる用意を作ってやる。タオルと着替えを渡すと、鋼のは一目散に風呂場へと駆け込む。可愛気があるじゃないか。何を想像したのか、後でゆっくり聞いてみたいところだ。
軍服を着替えたり、簡単にベッドメイキングを済ませていると、私のパジャマを盛大に余らせて鋼のが出て来た。
「これ、何で上着しかねえんだよ」
「私のサイズなのだから、君にはそれで足りるだろ」
「バカにしてんのかよ、おい」
「それに、すぐに脱ぐのに下まで必要か?可愛らしいな鋼のは」
「ぐ……」
言葉に詰まる鋼のの濡れた頭に、タオルを被せてくしゃくしゃにかき混ぜる。
「私も浴びてくるから、好きにしていなさい。水は冷蔵庫だ。頭はきちんと拭いておけよ?、風邪を引かれたらかなわんからな」
「ガキじゃねえんだ。バカにすんなよ!」
「……逃げても、いいんだぞ。今ならまだ」
「てめえは逃げんじゃねえぞ」
逃げ道を作ってやったのに、鋼のは自ら閉じた。私も汗を流しに風呂場へと向かう。
勇んで誘いに来た割には、反応が初々しい。旅の間に何かしらの成長があってもおかしくないと思っていたが、もしかして、何も経験した事がないのだろうか。それこそ、キスさえも。
(……いかん、これでは…)
これから始める行為が、何もかも彼の初めてだと思っただけで、下半身にくる。この世の全ての男は、大概「初物」に弱い。理屈でなく、習性なのだから仕方ない。
では何故、私を選んだのか。童貞を捨てるだけなら、女性を選べば良い。鎧の弟への後ろめたさか、機械鎧を気にしてからか。行きずりが上手く行かないなら、商売女を相手にしたって良いだろうに。
とにかく、今は私の想像でしかない。抱いている内に、わかるだろうか。仮説の中に一点、期待している自分がいる。そんな筈はない。何度も頭の中から一粒の光のような選択肢を消し去る。
本当に性欲処理だけだとしてもだ。私の所へ来たという事は、それだけ私を信用し、甘えているという事には違いない。その部分は素直に喜んでおくとしよう。
私がシャワーを浴びながら色々と考えている間も、鋼のはのんびりソファーに腰掛け、自分の家のように寛いで本を読んでいた。
「本はどうした。勝手に書斎に入ったな?」
「いいじゃねえか。あんた、色々持ってそうだし。なあこの本貸してくれ。宿で読む」
「勝手だな君は」
「今から本読むって言ってんじゃねえんだから、いいじゃねえか」
ため息をついて、私も腰掛ける。隣には鋼の脚と生身の足がすらりと布から伸びていて、つい視線が行く。
「なんだよスケベ気になるのかよ。捲って見せてやろうか」
「捲ったらどうせ、男物の下着が出てくるんだろ?そのままでは興奮しないな」
「文句が多いなあ」
「君こそ」
これが、今から体を重ねようとしている相手との会話かと思うと、可笑しくて仕方ない。鋼のらしいと言えば、らしいのだが。
「準備は?」
「いい加減待ちくたびれた」
「可愛くないなあ」
「俺が可愛い訳ねえだろ」
「なあ、鋼の」
「なんだよ」
「君は、私を相手に勃つのかね」
「……勃たなかったら、来てねえよ」
「不可解だが、今はその答えで十分だ。おいで、鋼の。寝室はこっちだよ」
鋼のの左手をそっと取って、立ち上がらせる。手は繋がないといけないのかと文句を漏らすので、私にだって気分を盛り上げる必要があるんだと答えたら、納得したように大人しくなった。
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