夏は暑いし大佐はエロいし。1
※四周年記念感謝文です。まるっと山も意味も落ちもありません。大半が性描写ですので、エロくないけどお気をつけ下さい。






それは夏の夕方。湿度の高い暑苦しい空気の中、赤と黒という更に暑苦しい色合いの、いつもの小さいのがやって来た。

夏だし。暑いし。イライラするし。
そんで大佐はなんだかエロいし。理由なんてそれで十分だろ。と言われたので、つい「なんだそりゃ」と答えてしまった。

「つまり…、盛ってるので、欲求不満のはけ口に私を使おうという事か」
「まあ、そうとも言える」

鋼のは、冷静に、至極真面目な顔で答える。私は困惑を隠せない。

「で、付き合ってくれんの?イヤか?気持ち良くはしてやるから、悪くないと思うけど」
「正気か、鋼の」
「正気かどうかは、今関係ない。大佐がこの話に乗るか乗らないかだ」

夜の執務室は、静かで暑くて、二人きりの室内に逃げ場はない。わざわざこんな時間まで私を待って、何をしてるんだろうかな、こいつは。

「あまり聞きたくないが…。私が断ったらどうする」
「帰るよ」
「他のどこかで相手を調達だなんて事は」
「そうだって言ったら、あんたは俺と義務でやろうと考えるんだろ?それは嫌だ。もっと簡単に考えろ。今、やるかやらないか。それだけ」

ツキツキと頭が痛む。眉間を押さえてなんとかやり過ごす。14も下の、少年。しかも部下(厳密には違うが)と、セックスが出来るかどうか。それだけだと割り切るには、私には色々と問題が大きすぎる。

「…こちらにも、納得出来るか理由が欲しい。何故、私を選んだ?」
「なんか最近、エロいから」
「君には、何もしていないと思うのだがね。心外だな」

言いがかりのような誘い文句に、気持ちは落ちるばかり。それでも鋼のは、真剣に私からの答えを待っている。

「どうすんの。やるのか、やらないのか」
「まあ待て。やるとしても、ここで始める気は無い」
「いいじゃねえか。ここで、さっさと終わらせて」
「先程から、君の都合ばかりだな。私の都合は?気持ちは?。たかだか行きずりの肉体関係だとしても、気持ちくらいは大切にするものだよ」
「あんたは、あるのか?。その、行きずり、とか」

鋼のの声が、ワントーン下がる。動揺を丸出しにされると、こちらがどきりとしてしまう。

「ある。と、言ったら?」

一瞬、少年の瞳に浮かぶ光。ああ、こんな顔をされたら、愛しくなるじゃないか。
黙ってしまった鋼のに手を伸ばす。そっと頬を撫でて、こちらへ顔を向けさせる。

「とりあえず、ここを出ようか。話をするにしても、都合は悪い」
「俺は、今すぐ答えが欲しい」
「慌てるな。もう少し空気を読めるよう、努力しなさい。それでないと、微かな機会も失ってしまうよ」

鋼のが、不本意そうに口を噤む。しかし、期待している事が手に取るようにわかる。彼は昔から、私には大変反抗的だが、素直で正直で、隠し事が下手な事も良く知っている。
あんな誘い方をして、私が断ったらどうするのだろう。それでも、断らない事が前提だったのだろうか。随分と甘えてくれているものだ。

帰り支度を終わらせて、不機嫌な鋼のの前に立つ。不安な顔で見上げて来たので、そっと前髪を梳いて、白い額に唇を寄せる。

「こっ、子供扱いすんなよ」
「子供だよ十分にね。来なさい、大人との違いを存分に思い知らせてやるよ」

鋼のが、ごくりと喉を動かした。今夜はきっと濃密な時間を過ごせるだろう。期待しているのは、彼だけではない。
出来るだけ平静を装ったつもりなのに、無意識に笑みを浮かべてしまうなんて。私もまだまだ修行が足りない。折角今迄、良い大人を演じて来たと言うのに。



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