そのはち(日記小ネタ)。
*増田がマネージャーだといいなこの場合
事はまた先程、宿命のライバル・エンヴィーがらみの一騒動。
エドワードがあることないことを公言しているせいで、エンヴィーの標的が時折私に向くようになった。目的がエドワードへの嫌がらせなので、彼がいる前でだけわざわざ抱きついてきたりするのだ。
「ぐあ〜!!!そいつは俺のもんだ離れやがれ!!!」
「はあ?、お前なんて迷惑だって思われてんのわかってないの?」
猫のケンカのような大騒ぎ。飛びかかる寸前の二匹を引き剥がして、うちの金色のちっこいのをやっと楽屋に連れ込む。
「あいつ…あああくそ腹が立つ、増田もなんでぎゅーとかほっぺにちゅーとかされてんだよ!!、消毒しろ腐るぞ!」
「腐りはしないからまず落ち着け。アイドルたるものいつも愛らしい笑顔が大切なんだろ?」
「増田っ!!、おれともちゅーって、ちゅううぅうぅうう!!!!!」
「取り乱すな、離れろ」
エドワードからの攻撃をブロックしながら帰り支度をはじめる。そのうちしぶしぶと服を脱ぎはじめた。
乱暴に顔を洗って化粧を落とすエドワードに、乳液を手渡す。透き通る白い肌はまるで陶器の人形のようなのに、その表情は般若のごとく険しい。
「………なんか…」
「なに」
「何人くらい殺して来たんだって面だよ。出待ちの子達が驚くよ」
指先で顔を引っ張って延ばし、眉間のシワをぐりぐり撫でてやるとちょっとづつ収まってきた。
化粧を落とし衣装を脱いだエドワードは普通の少年だ(とても綺麗ではあるが)。迎えが来るまで少々時間があるので、意地悪ついでに聞いてみようか。
「なあ、エドワード。そんなにエンヴィーと張り合いたいのか?」
「つうか、あいつ腹立つ。さっきだってあんたに」
「じゃあ超えとくか。おいで、エドワード。キスしよう」
「へ?」
「俺とキス。するんだろ?」
手を伸ばして白磁の頬を撫でる。金色の目が大きく見開いて、硬直しながら微妙にずりずりと後退りしていく。
「お…おれって!!ますだが俺とか言ってる!!!」
「仕事とプライベートは分けたいじゃないか。普段は使ってるよ、おかしいかい?」
「どうっ、ご、わっ」
「ほらほら、早く決めないと時間がないぞ」
機械が故障した時のような音を呟きながら、腰がどんどん引けて更にどんどん小さくなってゆく。
普段のエドワードは目立つ事が別段好きな訳でもなく、地味な子だ。この子のスイッチは『衣装』にある。化粧を施し衣装に着替えて、アイドルのスイッチをオンにする。
仕事が終わると途端に普通の子になりすぎて、こちらが拍子抜けしてしまうくらい。それだけ気を張り詰めて仕事をしているという事なのだろうけれど。
焦れったくなったので、屈んでエドワードの額にちゅっ。と小さなキスを落とした。がちがちに固まる彼の手を引き、片方には荷物を抱えてさっさと部屋を出た。
彼が私を攻めてくるのは『オン』の時しかない。思春期の胸に抱く感情の正体は定かではないが、まあ、意地悪もしたくなるさ。この胸の中にある切なさの正体は、私にだってわからない。
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