大佐のは本当にストレスなんだろうか。
※若干の濡れ場があります。ご注意。


嫌な夢を見た。

私達の間にあった障害が、全てなくなってしまった。鋼のは全てを取り戻し、少し成長していた。もう、上司とか部下とか、年の差とか、同性愛とか、いっぺんに吹き飛んでしまった。

「これでもう、俺らは幸せになれるんだな」

鋼のは私を見つめて嬉しそうに告げる。
笑顔にはうっすら涙を浮かべていて、愛しさにたまらなくなって、私は彼を抱き締めた。
小さくて、細くて、筋肉質で、しかも機械鎧が付いていて、これが彼以外の何者でもないという事を、何度も何度も撫でて触って確かめる。

「たいさ。たいさ、たいさ…」

鋼のは甘えた声で私を呼ぶ。そのうち絶対に名前で呼ばせてみせる。私も彼を銘でなく名で呼びたい。上司ではなく、恋人として。
金色の小さな頭を撫でて、さらさらの髪を指先で梳く。少し上を向かせて、そうっと唇を重ねた。柔らかくて、たまらなく甘い。重ねた間からゆっくり舌を差し入れて、深い所を舐める。

「ふ…、ぅん…」

甘く鳴る喉に興奮が抑えられない。小さな舌先を絡め取っては吸い上げる。苦しそうに息を繰り返す様子が愛らしい。

「耳は、好き?」

彼の耳元で甘く囁く。それだけで背筋を震わせてしまう所に、容赦なく愛撫を進める。柔らかな耳たぶを舐め、そのまま舌先を耳の穴へと差し入れる。わざと水音が響くように、逆側の耳の穴にも指先を入れて蓋にする。

「やっあ、ひゃ、んはあっ」

くすぐったそうな反応に、熱っぽい声が混ざる。指先でぬるぬるに濡れた耳を拭ってやると、恥ずかしそうに私に体を預けてくる。

「嫌なら止めようか?」
「……いじ、わる」

気遣ったつもりだったが、その一言で充分だった。再び深いキスを交わしながら、手は首筋や鎖骨、機械鎧の継ぎ目、滑らかな肌をじっくりとなぞる。布越しに胸の突起が当たるので、優しく弄って刺激すると、体をよじらせて反応する。

「かわいいね、エドワード。ここは気持ちいいかい?」
「や、っあ、へん…なんか…っ」
「気持ちいいんだね。すっかり硬くなってる」
「あ、あ、あ」

タンクトップをたくし上げ、乳首に舌を這わす。優しく舐めたり柔らかく歯を立てたりすると、堪らなくなった彼が私のシャツをぎゅうぎゅう掴んで、腰をくねらせる。

今まで知らなかったこんなに可愛らしい彼を、これからは「私だけが」知っていけるという征服欲に、心は暖かく満たされる。いつでも彼に触れる事が出来る。いつでも彼を独り占めして、思うままに愛を囁く事も出来る。なんて、なんて幸せなのだろうか。

深くいやらしいキスを繰り返し、彼の体を隅々まで撫で触る手は、そろそろ本題へと向かいたい。これだけ溶かしたんだ。もう、きっと彼の中心は硬く熱を帯びているに違いない。そんな期待に私も体が熱くなる。
引き締まった薄い腹。しかし肌は白く滑らかだ。ゆっくりとへそをなぞり、ベルトを外す。はやくはやくと気が急く。ベルトなんぞ引きちぎってしまいたい。
ズボンに手をかけ、脱がせようとしたところで、目が覚めた。


「ぐあああああ…っ!!!」





大きな後悔と未練に、その日1日仕事にならなかった。どうにか続きを見れないかと二度寝して遅刻して、中尉に散々怒られた事も就業の意識を削がれる原因だ。
とにかく、あんな夢を見てしまうなんて。エドワードはまだ16で、やらねばならない事もあって、私は実質上、彼の後見人で保護者みたいなもので、男だし部下なのだ。
私達が、世間を納得させられるような付き合いを出来る筈がない。

しかし、本日の夢で一つわかった事がある。私が彼との付き合いを拒む本当の壁は、「彼には成さねばならぬ事がある」という点だけで、男とか子供とか部下とかは、あんまり関係なかったのだ。
いけない事に気付いてしまった。いや、気付かないようにしていたのに。聖人君子の理論武装でガッチガチに隙無く固めて、脇目も振らず、お互いに成さねばならぬ事に向かって進んで行けるよう、援助も努力も惜しまず…

「……はぁ。」

深いため息に、力んだ思考が緩む。とにかく、今日は思考の隙間隙間にあられもない彼の姿が浮かんで仕方がない。匂いも味も、甘い声も滑らかな肌も。先ほどまで味わっていたかのように、いつまでも感覚が消えない。あんなに具体的でリアルな妄想が、あってたまるか。実は触っていたんじゃないのか。

今、目の前に現れて欲しくない。会いたいが会いたくない。今の私は何を口にしてしまうかわからない。自分の理性に全く自信が無い。
気付け代わりの苦いコーヒーでさえ、口の中で甘く香る。キリキリと痛む胃を押さえながら、私は結局今夜も残業に勤しむ。




2009/4/29


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あきゅろす。
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