19とんで20にそろそろなる俺



この度俺は、無事に20才の誕生日を迎える事になりました。
別に恋愛にばかりかまけていた訳ではなくて、きちんと旅もしていたし、アルフォンスと二人で色々乗り越えてきた。実は少し前までが一番大変で、色々あったけど割愛。アルは体を取り戻し、今はリゼンブールで静養している。残念ながら俺の手足は戻らなかった。でも、俺達は満足した。長かった旅をやっと終わらせた。19才の一年が、一番波瀾万丈だった。
大佐と暮らすんでしょ?と、アルが当たり前のように俺に言った時は、心臓が止まるかと言うほどにびっくりした。いや、兄ちゃんはお前と…と縋りつく勢いで出てはみたが、ピシャリと拒否された。

「ホモが良いこととは思わないけど、お互いが好きなら一緒に居なよ。兄さんも、もう自由にしていいんだよ」

優しい弟に、鼻水を垂らす勢いで感激した。そんなこんなで、実は先月から俺は大佐の所で世話になっている。


「ただいま、エドワード」

「大佐、お帰り!」

一緒に暮らし初めてから、大佐は俺を名前で呼んでくれる。照れくさいけど幸せだ。俺はまだ大佐をロイとは呼べない。だってそんなの、恥ずかしすぎる。
新婚のごとくラブラブではあるが、やっぱり進展は無い。強い抱擁とキスまで。誠実な男の決意はどこまでも堅くて、ここまで来ると尊敬にすら価する。

珍しく、俺の誕生日は二人でお祝いしようと、大佐からお願いされた。これは相当珍しい。いつもなら、田舎に帰れとか、アルを仲間外れにしたくないとか、苛々するくらいに気を回すのに。
勿論俺は快くOKして、大佐はすごく嬉しそうだった。

壁にかけられたカレンダーには、俺の誕生日に赤い丸がつけてあって、見る度に楽しみだけど、少し不安も感じている。
20才になったら一線を越えるという約束は、今でも覚えてくれてるんだろうか。そして、大佐に内緒にしたままの、俺の一度きりの裏切りの事も。
まあ、浮気の件は墓場まで持って行くとしても、20才を過ぎてもセックスを拒否されてしまったらどうしようか。大佐とヤリ放題とまでは思っていないが、本当に大人として扱って貰えるのだろうか。不安だがはっきり答えを知りたい。知ってこの不安を消し去りたい。
あまりしつこくして、今度こそ愛想を尽かされたらどうしよう。そんな事まで考えていたが、ついに俺の誕生日当日になった。


敢えて外へは出かけずに、買ってきたデカいチキンとか、大好きなシチューとか、最近気に入ってるパン屋のバケットとかしこたま買い込んで、二人だけのパーティーの準備をする。互いの好物ばかり並べた机の上は、質素ではあるがいつもより賑やかになる。
大佐は甘めのシャンパンをあけて、美しい新品のグラスに注いでくれる。

「エドワードの20才のお祝いと、これからの私達の幸せを願って」

大佐の指が優雅にグラスを傾ける。俺は前述の通り酒はやや鬼門なのだが、せっかくのお祝いなので口を付ける。久しぶりに飲んだ酒はとても美味しく感じた。

「今まで無事でいてくれて、ありがとう。大人になってくれて、ありがとう。私と20歳の誕生日を過ごしてくれて、本当にありがとう」

「大袈裟だよ」

「君が無事に生きてくれている事が、本当に嬉しいんだ。色々あったじゃないか。何度肝を潰した事か」

大袈裟と笑いながらも、大佐の言葉にじんわりする。大佐だって、軍人でありながら今まで無事で良かった。他の女とか男に取られなくて良かった。俺も、生きて旅を終わらせ、アルに体を取り戻し、大佐とこうして過ごせている事が本当に幸せだ。
楽しく食べて、飲み進めていくうちに、酒に薄く酔い始めた大佐が、とんでもない事を言い出した。

「…君が大人になるまでに、もっと良い出会いがあるんじゃないかと、身を引くことも実は考えた。でも、君が強く私を好いてくれたから、もう気持ちが離れられなくなってしまった。酷い大人で、すまない」

うっわわわわわあああぶねえええ。俺、ワガママ言いまくって、押せ押せで良かった。この人にはこれからも、頑固な所はこちらからワガママで強く求めて、軌道修正してやんなきゃならねえと言うわけか。

「大佐が今更、俺と別れるとか不穏な事言ったら、毎日ぶん殴る上に俺らの関係公表して、一生沿い遂げてやるからな」

脅しのつもりで切り返したら、大佐がちょっと嬉しそうに照れた。このずれてる所も、今の俺は可愛いとすら思えてしまう。モラル高くて純粋で、生真面目な俺の可愛い大佐。ついたため息が甘く香って、やっぱり酒は危険だなと思ったけど、目が合ったからとりあえず笑っておいた。



[*前へ][次へ#]

5/6ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!