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出会って約2週間、お互いにメールのやりとりも何度か交わしていたが、きちんと顔を会わせたのはまだ二回。
話などまだし足りないくらいだし異様に意気投合した訳でもなく、友人になるのには年齢差がありすぎる。
最初から人懐っこく無防備ではあったが、こんな状態で「部屋に行きたい」なんて所まで距離を詰めてくるものだろうか?。

これが女なら本当に分かり易いのだ。
押しかけ女房よろしく食事や掃除の世話をしたがる女性や、初めての食事の夜で「貴方の部屋で休ませて?」なんて、自信と喰われる気満々の女性に当たった事は何度かある(勿論、どちらもいただくかどうか選ぶ権利は私にだってある)。
しかし、それは好意から生まれる女性の下心なので勿論この場合は応用できない。

犯罪的な線も一応考えた。子供であると油断させ自分の容姿を武器にして、遊ぶ金欲しさに一人暮らしの大人を騙すとか襲うとか盗みに入るとか。悲しいかな一番これが現実味があったりする。
しかし、おごられるのを嫌がり、見ている限り自分の行動や容姿に自覚がないようにも…


「…わからん。」


あの子が何を考えているのか、さっぱり読めない。
私が考えすぎなのか?しかし、このままでは『……お願い。』なんて可愛く言われたら連帯保証人の書類に判子を押してしまいそうなくらいに彼を全面的に受け入れ、心を許してしまいそうな自分がいるのだ。



「そりゃあ、好きなんだろ、お前の事が」
「子供とはいえ、高校生なんだぞ?男だし。有り得ないだろ」
「子供ってのは恐ろしいくらいに純粋な所があったりするもんだ」
「…だから、高2だと」
「まだ『純粋な好意』ってのがある年頃なんだろ。それに、おまえが優しくするから嬉しいんじゃないのか?兄貴みたいで」
「なるほど…」


それも一理ある。家族と離れて暮らしているし、その家庭の事情もやや複雑なようだったし。
缶ビールを置くと、冷静な意見をくれた親友に相談を聞いてくれた礼を言って電話を切ろうとした。


「…それよりも…」
「何だ?」
「俺は相手の子よりもお前の方が心配だなあ、珍しくメロメロじゃねえか。今度、写真くらい見せろよ?相談料だ」
「…いつもお前の娘自慢を聞いてるんだ、勘弁してくれ」


相手の家庭自慢が始まる前にやんわり言葉を遮って電話を切った。申し訳ないが、今の自分には余裕も時間もない。一方的に相談しておいて勝手なのだが。

さて、もう少し頑張って部屋を片付けよう。まだ結論は出ていないが、泣いても笑ってもあの子が来るのは明日なんだ。
気がつくと、掃除機をかけながら鼻歌を歌っている自分に気がついて笑ってしまった。





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あきゅろす。
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