デリマス 8



「さっさとやろうぜ」
 そう言って電気を消し、カーテンを閉めて服を脱ぎ出すエドワードに、少しは慣れて来たのかとロイは面白くなさそうな顔で出された麦茶を飲み干した。
 エドワードがロイを呼んで三回目。毎週同じ曜日の同じ時間に呼ぶという事は、このタイミングでしか動けないからだろう。もう呼ばれないかもしれないと思っていたロイだが、転送されて来たエドワードからの依頼メールを見て、すぐに社長権限でこの日を開けさせるスケジュールを無理に組んだ。この事はハボック以外には秘密にしてある。
 タオルなどを置いて準備するエドワードに、ロイも上着を脱いで積んである本の上に無造作に置いた。
「パンツは脱がないのか?」
 パンツ一丁でベッドの上に座ったエドワードに、ロイが意地悪く訪ねる。
「恥ずかしくはないだろう?、男同士なんだから」
「あんたほど面の皮が厚いわけじゃねーんだ」
 夕方の部屋はカーテンを引いて電気を消しても暗くはならない。西日がカーテンの隙間から漏れて、目を慣らす様な暗闇にはほど遠い。
「まだそんな口がきけるのか。…ああ、そうだ。君は優しいのが好きだったね」
 ロイは優しくエドワードの頬を撫でて、そっと唇を重ねた。最初に誘ったときに見せたような穏やかな表情を向ける。
「自分で脱いでごらん。私によく見えるように」
 口調は柔らかいのに内容は命令に近い。エドワードの決定でなく先をねだらせるようなやり方が幼いプライドを踏み潰す。しかし、先の快楽を期待する若い体が強がりを突き通せる訳も無い。勿論、ロイはそれらを知った上で行っており、またその真意にもエドワードは気付いているので悔しそうに睨むしかない。
「本当に脱ぐのが嫌なら無理にしても悪いかと思ったんだが、また赤ん坊みたいに下も脱がして欲しいのかな?。まあ、そういうプレイがいいならそうしてやるが」
 脱いでも脱がなくても恥。人よりもプライドの高いエドワードは更に追い込まれてしまう。ぎり。と苦虫を噛み潰したような表情のまま下着を下ろすと、既にペニスは熱を持ち始め中途半端に立ち上がっていた。
「……いい子だ」
 ご褒美だと言わんばかりにロイはエドワードの上に覆い被さった。こうしたエドワードの言動の一つ一つは、ロイが思う通りの欲を満たしてくれる。気が強く純粋でプライドの高いエドワードが、自分の与える甘い言葉や快感に耐えながらも引きずられ、悔しそうにしながらも陥落していく。その過程が堪らない。勝てて当たり前の勝負だが、楽しいものは楽しい。赤子の手を捻って喜ぶ自分の趣味の悪さをロイは開き直って楽しむ。
「ん、……ン…」
 舌を絡め濃厚なキスをしながらエドワードのペニスを扱いていると、エドワードがロイの腰を撫でている事に気付く。擽ったい刺激にロイが愛撫の手を止める。
「なんだい?エドワード」
「その、オレも何かしたいっていうのは、ダメなのか?」
「どんな事がしたいのか言ってごらん」
「オプション扱いになるから?」
「それもあるが、私が良いか悪いかだね。ただでさえイレギュラーな依頼なのだから」
 少しだけ迷って、エドワードが口を開く。
「………脱いで、欲しい」
「ほう」
 思わぬ依頼にロイもつい素に戻りそうになる。
「オレも触りたい。その、あんたの、とかに」
「へえ。そっちに興味が湧いたか」
「違う。やられっぱなしは性に合わないだけだ!」
 やられっぱなしとは何だ。して欲しくて呼んでいるくせに。と思ったが、服も皺になりそうだし要求を飲んでやる事にした。ロイは仕方なく起き上がりシャツのボタンを外してゆく。ベルトを抜いてズボンも脱ぎ、服はベッドの下に落とした。躊躇わないロイの行動に、逆にエドワードが恥ずかしそうにする。
「ほらこれでいいか。下着一枚ならさっきの君と同じだ。下も脱ぐか?」
 ロイの身体は程よく筋肉質で無駄が無い。スーツを着ている時の印象とは全く違う事にエドワードは驚いて、じっと見つめてしまう。
「なんか、思ったより」
「文句か?ほら。向かい合っているなら触れるだろ」
 ロイはエドワードの身体を倒して、空気を戻す為のキスをする。華奢な手首を優しく掴んで、首筋や胸元を触らせる。
「好きにしてごらん。でも、あまり乱暴な事はしてくれるなよ」
「なあ、どうしたらきもちいい?」
「君がしてもらって気持ちが良いと思った様に触ってごらん」
 許しを貰ったエドワードは、ロイにぎゅっと抱きつく。直に重なる肌は吸い付くようで心地よく、相手の体温は熱くて、は。と息を漏らす。ロイの胸元に頬を寄せて可愛らしい真似で幸せそうにしているエドワードに、ロイも抱き締めてこめかみや額へ唇で触れる。喉の奥が乾く程に甘くて、まるで恋人と過ごしている様な気持ちになる。
 ロイの手の中でエドワードのペニスは熱く張り、このまま弄っていれば簡単に達してしまう状態だ。だが、今日は邪魔が入る。エドワードの手がロイの身体を撫でているのだ。遠慮がちに下着の上からロイのペニスを触っていたが、そのうち大胆にも下着を押し下げ、直に握って熱を煽る。決して上手ではないが、柔らかい手がたどたどしく与え続ける快感は少し新鮮で、焦らしながらロイの熱を確実に上げ続ける。ならばと楽しむ事にして、エドワードの物と一緒に扱いたり、裏筋を合わせて擦り上げる。大きさも色も違うのに、どちらも同じ様に興奮し硬くなって、その先を望んでいる。
「あ、は……ん、ん」
 キスを強請って舌を伸ばし、ロイにされた事を真似て肩や腕に歯を立て甘噛みする。一方的に与えられるだけでない関係に、エドワードがいつもよりも夢中になっている。
 エドワードの甘噛みは少し強くて、加減を知らない子猫にじゃれ付かれているようだ。噛んでは肌に舌を這わす刺激に、歯形が残るかもしれないと思いながらロイは好きな様にさせる。
「こんな事にハマって、ご両親が泣くぞ」
「居ねえから、両親」
 ロイの茶化すような言葉に、エドワードは愛撫を止めずにさらりと返した。
「母さんはオレが小さい頃に死んだ。オヤジは居ねえ」
「じゃあ今頃、天国で頭抱えてるかもな」
「そっか。見えてたらイヤだなー」
 悪びれる様子も無く、はは。と笑ってエドワードは行為を続ける。止めるつもりの無い態度にロイも相手の余裕を奪う勢いで唇を塞いだ。





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