デリマス 6



 依頼した時間通りに来たロイに、エドワードは少し驚いた顔をして迎えた。
「……どうぞ」
「君が呼んだんじゃないか。来ない方が良かったか?」
「まあそうだけど。普通は呼んでも来るとは思わねえじゃん」
 まだ昼間に夏を引きずった気温を配慮してか、ちゃんとクーラーも効かせてあって、部屋も片付いている。来るか来ないかわからない相手を律儀に準備して待っていた所を見ると、エドワードが冷やかしに二回目を申し込んだのではない事がわかる。
「オーナーを指名するとは、いい度胸だな」
「でも来ただろ」
「男に目覚めたか、それとも、私が魅力的過ぎて忘れられなくなったか」
「金さえ払ってれば来て抜いてくれんだからな。こんな簡単な事ねえって気付いただけだ」
「可愛げがないねー」
「そんなのオレに期待されてもな」
 二週間ちょっとぶりに顔を会わせてみれば、色気も無くこんな会話だ。先週の様子から思えば、エドワードは随分と生意気な口をきく。きっとこちらが普段の彼なのだろう。ならばその言葉が懇願の色を含むまでじっくり可愛がってやるのも一興かと、ロイの悪い癖が腹の底で疼く。
 相変わらずの狭い部屋。昼間は西日が強すぎるのかカーテンが引かれていて薄暗い。前回は小さなテーブルへと促されたロイだったが、声もかけずソファー代わりにベットへ腰掛ける。黒に近い紺のスーツのロイと、Tシャツにカーキのカーゴパンツのエドワード。大人の体格に短い黒い髪と、少年のように細い体躯に長い金の髪。服装も体格も、何もかもが対照的だ。
 ロイが上着を脱いで積まれた本の上に置いた。袖のボタンを外して腕を捲る。
「あんた、シャワーは浴びるか?」
 エドワードはロイの上着をハンガーにかけてカーテンレールに吊るす。彼は気遣いの出来るいい子なのだと改めてロイは思う。デリヘルで男を指名してはいるけれど。
「君は浴びた?」
「浴びたけど、普通はお姉さん来たら客はその場で浴びるんだろ?」
「ほう、勉強したのか。入ったのなら私は構わないよ。今日はベッドでいいだろ。それともまた床がいいか」
「何か飲まなくていいのかよ。茶とか」
 落ち着いていたように見えたが、エドワードはグラスを手にしたままうろうろしている。普段どおりに振舞っていても、二回目の行為を前に気が気ではないようだ。
「茶が飲みたくて私を呼んだ訳ではないだろう?」
「一応、気ぃ遣ってんだけど」
「それは優しいね。で、どうする。もっと気を遣うか」
「あんたは言い方が意地悪いな」
「じゃあ優しくしよう」
 ふ。と柔らかい笑みを浮かべてエドワードに向かって手を差し出す。
「おいで、エドワード」
 甘い声音で呼ばれても、目の前で用意された優しさはあまりにも白々しい。コップをテーブルに置いてエドワードがロイに近づく。
「ほんと、あんたは何でも嘘くせえな」
 それでも、非難の声と共に大人の手の上に一回り小さな手が重ねられる。そっと繋ぐとロイはそのままエドワードを引き寄せて抱きしめ、ベッドに倒れ込んた。

 柔らかく啄ばむようなキスと、深く重ねて中を抉るように舌を絡めるキス。繰り返しては次をねだる小さな唇に、ロイも惜しみなく与える。たどたどしさはあるものの、吹っ切れたのか欲望に忠実になったのか。エドワードからも腕をまわして抱き付き積極的に先を望む様子に、大人は少しだけ遠慮を無くす。
 長い前髪を除けて耳を食み、Tシャツの上から手のひらでゆっくりと平らな胸を撫でる。指先に当たった小さな突起を捉え、指先で強く擦るように刺激を加える。
「んっ…」
 服の中へ手を滑り込ませて直に触る。硬くなった突起をこねるように弄り、エドワードの白い首筋をべろりと舐め上げた。喉笛を噛み切る獣のように、喉仏を舌で強くなぞり歯を立てる。
「っふ…う、……っ」
 これだけでもあからさまに感じている反応に、ロイも手加減を忘れ始める。シャツを捲り上げると、エドワードの体は思っていた以上に白い。つるりとした筋肉質の若く張りのある肌は滑らかだ。
「ひゃ」
 乳首を舐められ、驚きに息が抜けるような声が上がる。歯を立てて軽く甘噛みを繰り返せば、細い腰が浮く。
「痛い?それとも、もっと強い方がいいか」
「や、う」
「嫌ではなさそうだな」
 脇腹を撫でた手のひらは、エドワードの下腹部へと進む。ためらい無く中心を撫でて揉んで、その変化を確認する。
「っ…、……は」
「ほら、腕を上げて。顔を見せてごらん」
「…や、だ」
「今日は前よりももっとイイコトをするよ、エドワード」
 耳を食めば顔を隠していた腕も力が抜ける。Tシャツを脱がし、腰を抱えて簡単にズボンも脱がしてしまう。ロイにとっては小柄なエドワードなど抵抗さえなければ好きなように扱える大きさだ。
 まだ恥ずかしそうにしているエドワードの耳元で、ロイが囁く。
「口で、して欲しい?」
 悪魔の誘惑は今のエドワードには魅力的過ぎた。彼が出来る事といえば、目をつむり顔を背けた程度だった。
 邪魔を外すと肌の白さは一層に際立って見える。金の茂みは薄く、引き締まった下腹から指を滑らせて焦らす。ロイの目の前では若いペニスは硬く立ち上がり、その先を望んでいるのがありありと分かる。
「舐められた事は?」
「あ、ある訳ねえだろ!」
「奇遇だな。私も男性器を口で愛撫した事はないよ」
 体をずらして頭を下げ、ぴんと立つそれに唇を寄せる。つるりとした先端を飴のように舐めて様子を見ると、エドワードの脚がもじもじと動く。
「ん、…っ……」 
 口に含み唾液を絡め、ゆっくりと唇で扱けば、白い指がシーツを握っている。気持ちが良いのだろう。堪えながらも快感に負けてゆく姿がロイを煽る。脚を立たせて開きあられもない格好にさせられても抵抗はない。裏筋を強く舐め上げて繰り返ししゃぶれば、エドワードの腰が揺れて吐息が漏れる。
「ぁ、あ」
 気持ちが良さそうに漏れる甘い声は女の喘ぎ声とは違った高さを持ち、幼い色を含んだエドワードの声はロイの身体に響く。
(駄目だ。これでは俺が)



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