水曜日 1




*さて、水曜日になっちゃいました。*



いつものように会社帰りにエドの部屋に来て、いつものように勉強を教えてやる。先週あんな楽しい事をしてしまったから、またねだられるかもと思っていたけれどそんな風でもなかった。ちょっと安心しつつも期待外れ、といった所か。

「これ、なあ。なんでこうなんの」

「もう少し自分で考えなさい。だからこれは…」

狭い机に頭を突き合わせながら、わからない所を教えたり問題を解かせたり。
でも、至近距離で気付いた事がある。どうやら今日は風呂に入ったらしい。シャンプーのいい匂いと揺れる金色の尻尾が、ゆらゆらさらさらと理性を揺らしてくれる。こんなにあからさまに期待されてしまうと、気恥ずかしいやら嬉しいやら。またちょっかいを出したくなるじゃないか。


誘惑に耐えること1時間。答え合わせと休憩(勿論、集中力の続かないエドの為の休憩)にやっと緊張を解く。

「コーヒー淹れたよ。なんかお菓子とか欲しかった?腹減らねえ?」

採点してるノートの隣にカップが置かれる。腹もいい加減空いてはいるが、甘い菓子より君がいいとか、また阿呆な言葉が浮かんでくる。
この間は、興奮し過ぎて相当に沸いていた自覚がある。あんな薄っぺらいセリフでエドは萎えたりしていなかったろうか?『こいつ、いい歳してこういうAVとか借りてんのかな…』とか思われでもしたら、もう立ち直れない。いや寧ろ立たない。ここに誓おう。あんな、安っぽいAVのセリフみたいな事はもう言わない。決して言うもんか、実はとても楽しかったけど。

「おーい、なあ、ロイ。なんか食うかよ。俺も腹減ってんだけど!」

「っ!!…あ、ああ。ピザでも頼むか?」

ぼんやりし過ぎて顔を覗き込まれる。慌てている俺の方が意識しているみたいで恥ずかしくなった。

「ロイはさあ、ピザ好きだよね」

「そういう訳でもないんだが」

ニコニコしながら宅配ピザ屋のチラシを片手に持って来て、何が食べたいかと一応聞かれた。でもエドの視線はポテマヨとかテリヤキチキンを指していて、俺の好きなトマトベースでオリーブが乗っている物は諦めた。

「じゃあピザが来るまで勉強するか」

「えー、けちくせえー」

「それと、俺のことは名前でなく『先生』と呼べと言ってるだろ」

「それもけちくせえ!いいじゃねえか、減るもんじゃねえし」

「ケジメだ。『先生』と呼べ」

ちょいちょいと手先だけで呼んで再び机に向かうよう促す。え〜〜と発音する口のまま、あと1mの距離まで来ているが、壁があって邪魔されているかの如くエドは微動だにしない。

「それに、『先生』って呼ばれた方が」

「偉そうだからとか、つまんねえ事言うなよ」

「名前よりも興奮するなあ…」

「先生っ!先生、勉強しよ!さっさと終わらせて、ピザ食おう先生っ!!」

勢い良く座ってシャーペンを握る。子猫の皮を被った子犬が、全力で見えない尻尾を振っている。
かわいいなあ。男でいいから自分の物にしてしまいたい。犯罪だが上手くやれる自信がある、セックスだけでなく人間関係も。ちょっと奢り過ぎかとも思うが、人間は目の前の欲に簡単に負けてしまうものなのだよ。謙虚でなんていられやしない。
そして、誘惑に負けたずるい大人は、自分に言い訳を作るのも上手い。


「このページ、小テスト代わりにやろうか。時間は15分な」

「ええぇ〜〜〜」

「四問中三問以上正解で『ご褒美』というのはどうだ?」

ご褒美という直接的な言葉にエドの表情が変わる。この子はこういう恥ずかしい事を言われるのが好きなんじゃないだろうか。緊張と期待を含んだ眼差しが横から向けられる。

「何してくれんの」

「キスしてやる」

「デコにちゅーとか、簡単なのはイヤだ」

「エドが満足するような、いやらしいのならいいんだろう?」

「……がんばる」

口元が柔らかくむにゃっと固まる。期待ににやけて、でも気が引き締まって。そんな所だろうか。

問題を解かせる間を待つなんていつもしている事なのに、今、彼を待つ15分はなぜか異様に長く感じられる。机を明け渡して後ろのベッドに腰掛けながら。そわそわと自分が落ち着かない。
何をしてやろうか、どこまで許してやろうか。考えてはあるが、後は自分が決めた一線で踏みとどまる事が出来るかどうか…それだけのような気もする。
最終的には最後までいただく事は確実だが、後ろを慣らすのにどれくらいかかるかなとかそんな具体的なプランで顔がにやけそうになる。

「できた。これでどうだ!」

振り返りノートを差し出すエドから、手を伸ばして受け取る。簡単に眺めて答えをチェックすれば…

「正解。すごいな、やれば出来るじゃないか」

「見たか俺様の実力!」

その実力がいつも出れば良いのにと思いながらノートを脇に置き、片手で軽くネクタイを緩ませる。俺の動作に逐一釘付けになっているエドの顔は、目元を薄く染め既に期待に満ち溢れている。見せつけるように、しゅ。とネクタイを抜いてシャツのボタンを2つ程外し、準備もやる気も万全を見せる。

「おいで」

腕を広げてエドを呼び込む。ふらふらと誘蛾灯に誘われるように寄ると、体を預けようか迷ってからためらいがちに手を伸ばしてくる。優しく引き寄せてそのままベッドになだれ込んだ。

「ごほうび、だな」

わざとゆっくりと耳元で囁き、ぺろりと耳たぶを舐める。エドの体がぶるりと震えて予想した通りの反応に顔がにやけて仕方ない。
先程から誘っていたシャンプーの匂いを我慢することなく堪能し、頬や目元に軽いキスを落としていく。緊張に身を堅くし目を瞑るエドは、どんな気持ちでこうされているんだろうかと一瞬だけ考えたが、先に進みたくて要らない思考はさっさと中断させた。
柔らかい唇を舐め、啄むように唇を重ねる。唇で下唇を食むようにしていると、堪らなくなったのか自分から舌を伸ばして舐めてきた。

「エド。舌、そのまま伸ばして」

「んぃ」

舌だけをわざとぺちゃぺちゃと音を立てて絡める。苦しければ止めてもいいものを浅く息を繰り返してもっととねだるエドが可愛い。一旦唇を離して指先で唾液を拭ってやる。

「満足、したか?」

「…まだ、全然」

腕をまわして背中のシャツを掴まれる。聞いてみたが止める気は元から無い。エドに強請らせたりお願いさせたりしたいだけなんだ。エドの体を抱きしめ直すと、深く唇を重ねて口内を掻き回す。

「んっ…ふ……っ……」

静かな室内は微かな息と濡れた音が良く聞こえる。キスを繰り返しながら腿ををエドの股に押し付けて軽く刺激してやる。夢中になってキスを繰り返すエドの手が、俺の背中から降りて腰を撫で始めた。

「…だめだよ、今日はここまで。ご褒美はキスだけだよ」

遮るようにやんわりと手を握って指を絡ませて繋ぐ。そんな後生なと言わんばかりの表情で見上げてきて、俺の脆い理性が軽く揺らいでしまう。なんてったって、据え膳の上に今夜はこの家に二人きりなんだから。

柔らかい表情を浮かべたまま体を起こしてベッドに腰掛ける。体を離した事に不安そうにしながら、少し遅れてエドも上体を起こす。

「ご褒美がキスまでなら、先は?」

「さあな。『ご褒美』だって言っただろう?。俺が今日できるのはここまで」

「なっ…!!!」

期待を裏切られショックを受けた顔で硬直する。言葉が出て来ないらしくてフリーズと言ったところか。人間は物事の殆どを視覚で判断している為、相手が柔らかい笑みを浮かべて肯定や許諾をイメージさせながら、言葉で否定や拒絶をするとギャップに混乱する。いいね。混乱してごらんとばかりに俺の口調は優しくなるばかりでエドの泣きそうな表情を一層に責める。

「約束は守らないとな。それにもう直ぐピザが…ほら、インターホンが鳴ってる」

タイミング良くインターホンが鳴って、エドがどうにもならない状況に、悔しそうに薄く涙ぐむ。がばっと勢い良く起きあがると自分の財布をひっ掴んで、バタバタと飛び出して行った。そういう表情や仕草は俺の加虐心を煽るだけなんだが、あれが天然だからまた堪らない。


ピザとサラダとコーヒーがテーブルに並んでも、会話は弾む筈もなく静かに過ぎていく。時々話しかけてやるが、『うん』とか『ありがと』だけで先には繋がらない。それでも気にしているのか動きはぎこちなくて、俺の反応を伺う。

「エド。そんなに怒るな。また正解したらしてやるから」

「なんかさあ、そういうのってさあ…」

「不満なら止めようか。褒美なんてなくても元よりエドの成績が上がる事が目的だからな」

「いい。褒美で、いい」

この一言で完全に上下関係が決まった。先生と生徒という関係でなく、惚れた側と惚れられた側という恋愛の上下関係。この年頃に於いては相当に強力な拘束力を持つことは間違いない。
決まってしまったのなら、少しくらいは与えてやってもいいかなと余裕が勝手に欲望の紐を緩める。

「エド、今夜はこの家に一人なんだよな?」

「…そうだけど」

「俺がシャワーを貸して貰える余裕とかはあるのかな」

「っ!!!」

エドの動きがぴたりと止まる。口に頬張ったピザを急いで飲み込み、何故かコーヒーカップを両手で掴んで一口含む。

「……さっき、これ以上ねえって言ってたじゃん」

「嫌なら止すと言ってるだろ?基本的には俺の考えは変わらん」

「変わんなくて、いいです。風呂沸かした方がいいの?」

「や、必要に応じてシャワー程度貸して貰えたらありがたいな、と。そんなにがっつり他人様の家でリラックスは出来ないな」

「タオルとかもあるから。勝手に使っていいよ」

平静を装っているが、動揺から相変わらずカップを両手で持ったまま、コーヒーを飲むペースが異様に早い。やはり、こんなかわいい子に何もしない訳がないな。一人でほくそ笑んで一人で納得する。
何かを期待しているのは、彼だけじゃないという事だ。





一通り食べ終え、嫌がるエドをなだめて机に向かわせてみたが、落ち着きは無く勉強は捗らない。あれだけ煽られたら気が気でなくなるか。
問題の進み具合と時計を見比べると、時間もそろそろといった所。

「今日はこんな所かな。じゃあ次は再来週くらいに来るから」

「来週は?ちょっと早めたりとか、ムリ?」

ノートを片付けながら名残惜しそうに聞いてくる。甘やかすのも嫌いではないが、少量の苦みがあった方が甘みは強く感じるものだ。
改めて時計を見る。終電で帰るにしても3時間は余裕で使える。いい時間だ。

「早くって…。デートの約束をしているんじゃないんだよ」

「………そうだな」

エドがしょんぼりしながら席を立つ。上着を羽織ったり財布を確認しながら、どうやら出掛ける支度を始めている。

「先生、ネクタイするかボタン止めるかしてから帰れよ。あんたみたいのが色気振りまきながら歩いてたら、ぜって襲われる」

「酷い言われ様だな」

「駅まで俺も一緒に行くよ。コンビニにも行きたいし」

俺が心配だから送って行ってやる、という事か。そんなに苦しい言い訳を並べなくてもいいのに。一緒に居たいと素直に言えない彼が可愛いくて、口元がにやけてしまわないよう気をつける。手を伸ばしてエドの腕を掴む。驚いて大きな瞳がこちらを向くが、嫌悪は全く感じられない。当たり前だ。こっちは全て確信犯でやってるんだ。

「着なくちゃならんのかな。君も、上着とか」

「え…だって、帰るだろ?」

「脱ぐかもしれないのに?、まあ、脱がせるのも楽しいけどな」

「う、……あ……」

「出かける用事があるなら俺も一緒に帰ろうかな。コンビニの用事は重要?」

一呼吸あってから勢い良くぶんぶんと頭を振って、答えが帰ってくる。強く引き寄せて抱きしめると簡単に腕の中に収まる細い体。

「仕方ないだろ、俺にだって会社がある。再来週まで会えないんだよ?今、少しだけ一緒にいる時間をねだったらいけないかな」

「…言ってる事とやってる事、違くね?。いいけど」

「俺の立場としては、勉強が疎かになったら困るんだよ。今日はもう俺の仕事は終了だからな」

ぎゅうっと抱きついてくるまま相手を抱えて、また隣のベッドに場所を移した。こっちのほうが本腰をいれていやらしい行為に専念できる。椅子とか机とかのプレイはそのうちだなと、さっき問題を解かせながら思っていたりした。楽しみは多いに越した事はない。
先程よりも大胆に唇を合わせて、エドがキスを強請ってくる。互いの口内だけでなく、エドの耳の穴にも舌先をねじ込んで音を立てる。

「っは……ふ、は……」

「俺が来る前にシャワーでも浴びたのか?、こうやって、どこを舐められてもいいように」

「……っく…!!」

意地悪く囁けば、みるみるうちに頬が染まる。やはりエドは言葉に責められると弱いみたいだ。頭が良いと余計に沢山の事を想像してしまうのだろう。
手を下半身へと伸ばし、太股から撫で上げる。腰を撫で、内側を撫でて期待を煽れば若い中心はすぐに反応し服の中で膨らんでいるのがわかる。

「ほら、服。邪魔だろ?」

エドの上着の前を大きく開き、ズボンも抜き取ってしまう。素肌に舌を這わせると体を震わせ、しがみついてくる。近くなった俺の頭に頬刷りしてはキスをする。この子は本当に俺の事が好きなんだろうな。何がそんなに気に入ったのかはわからないが、好かれている実感は伝わって来る。
エドの下着を下ろし、直にぺニスを握り込む。陰茎をゆっくり扱き、先端を揉むと先走りが漏れてくる。

「ここ、舐めてやりたいけど、古典の褒美にとっといてやるからな」

「と、とっとかなくても、いいです。今でも、全然」

緊張に丁寧な言葉で返すエドに笑いながら、体を撫でていた片方の手を引いて、指先を舐めて濡らす。

「それより…こっち。あれから、自分で弄った?」

「………」

「ちゃんと言ってみな。すぐバレるんだから」

下着を取り去り、尻を手のひらで撫でる。塗らした指先で穴を柔く揉むように押す。恥ずかしさから答えられずに黙るエドに、答えを促すように指の腹で唾液を塗り込めてゆく。

「……した」

「どういう風に?」

「指…いれて、ちょっと、動かして…」

「前は?」

「一緒に、した。先生が、してくれたみたいのが…よ、かった、から…」

この間の淫行は思ったよりもずっと影響が大きかったようで、アナルオナニーをさせるくらいには良かったらしい。恥ずかしそうに答えながらも、あてた指先に入り口がひくりと動いている事も見逃しはしなかった。



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