031・三段目


「そろそろ糖分補給しませんか」

そんな感じのメールを合図に、俺らはアイスクリーム屋に集合する。と言っても、オレが仕事終わりのロイさんをアイスクリーム屋で待つって感じなんだけど。
実はもっとメールしてるんだ、主にオレから。おはようとかおやすみとか、お疲れ様とか。ロイさんも手が空いてれば律儀に返してくれる。
あれからアイスクリーム屋でのデートを三回した。週一で会って二日に一回以上メールしてれば上出来だと思うんだ。
今日も待ってる間にレギュラーのロッキーロードを一つ平らげて、ロイさんからの遅れるよメールを眺める。

『おはよう。学校に遅れるなよ?』

読み返す度に顔がにやける。これはこないだロイさんから来たメール。朝に弱いオレが、まだベッドの中でもにゃもにゃしてる時に着信した。
なんだようるせえなあと五分寝られるだろうが。と画面を開けてみて、眠気は一気に吹っ飛んだ。飛び起きてベッドに正座して、即返信する。

『おはよう。
メールで起きれた。ありがとう!
ロイさんもいってらっしゃい。気をつけて』
なんか付き合ってるみたいなメールじゃん?おはようとかさ。胸ん中がぽかぽかしてこそばゆい。ひひひひ。
ロイさんは今、付き合ってる人いないんだって。彼女がいたらその人をダシに甘いもの食べられるんだけどって言ってた。

「じゃあオレでいいじゃん。彼女じゃないから居なくならないよ」

って、また口説いてみた。かなり真剣に。

「ありがとう。君は優しいんだね」

気を遣われたと思ったらしい。やっぱりこいつは鈍い。男相手に恋愛感情ってのが頭の中にはないのかな、どうしたら可能性に気付いてくれるんだろう。



「すまない。遅くなった…どうした?」
「わ、何でもねえ!」

急に覗き込まれて慌てて携帯を閉じる。最近のロイさんは少しレベルアップして、一人で店内まで入って来られるようになったんだ。
ベージュのコートと鞄を抱えてるって事は、駅から走って来てくれたのかな。今日は濃いグレーのスーツに紺のネクタイ。なんか禁欲的でいい。そのネクタイ、オレに外させてはくれないだろうか。

「一時間も待たせてしまったな。アイスクリームでなく、食事にしようか?」
「しょくじ…!!」
「嫌か?、そうか家に用意が」
「外で食ってくるって言ったから大丈夫!。食事もいいけど、ロイさんとアイスも食べたいな」
「ありがとう。どちらを先にしようか」
「どっちでも。後でまた来てもいいし」

一緒に食事とは新たな展開だ。友達とだって普通に食って帰るのに、ロイさんとだと特別な気になる。よしよし順調に距離を詰めてるぞ。

「エドワードは何が食べたい?」
「オレ、好き嫌い無いんだ。ロイさんは何が好き?」
「私もあまり好き嫌いは無いんだよ。エドワードの好きなものを食べよう。奢るから」
「え、なんかそれは悪いから」
「待たせたお詫びだ。ハンバーグ?それともオムライス?」
「くそ、子供扱いすんなよ。好きだけど!」

制服姿のオレとスーツ姿のロイさん。並んでても恋人同士には絶対見えないだろう。でもオレは諦めない。夏までにはぐぐっと距離を詰めて親密な仲になる予定。もうオレのスケジュール帳にはそう書いてある。


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