馴れ初め
◆安っぽい青春じみた恋愛は如何?◆


週末の歌舞伎町なんて掃いて捨てる程酔っ払っいはたくさんいて、片っ端から帰れと言いたい所だけど、俺もその酔っ払いのうちの一人だから仕方ない。

失恋したというエドワードに呼び出されたのが23:25。終電で迎えに来たら後は漫喫かカラオケでオールくらいしか道はなくて…あ、ホテルとかあったな。でも男同士はお断りじゃなかったかなーとか。冷えて生地がガム並に硬くなったピザをほうばる。ぼんやりしてたら次の曲が始まって、マイクを握りっ放しのエドワードが再び立ち上がる。

「なんだよあんたも歌えよー!ロイー!!」

マイクをオンにしたまま喋るなよ近くなんだから。泡の消えた三杯目のジョッキ生をちびちび飲んでたら、いきなり横から取り上げられた。

「あーっもう飲むな弱いんだから、エド!止めなさい!」

制止を無視して一気飲み。でもマイクは離さず顔は満面の笑み。真っ赤な顔して猿みたいだなと思う。

「未成年が飲酒してると、一緒にいる大人も酒を出した店も怒られるんだからな。…どんなになっても知らないぞ」

「言わなきゃばれねぇよ」

「バレるだろどう見ても」

何かわからないけどにっこにこしている。やけっぱちってやつか。俺もやけっぱちなんだが、こいつにゃわからないだろう。でなきゃ俺を呼び出したりしない筈だから。

「…おれさ〜…」

「取り敢えずマイクで喋るなうるさい」

悲壮な声にエコーがかかる。曲を停止してエドからマイクを奪った。ぽすんと脱力するように真隣に座ったので、これ幸いと手からジョッキも奪って机に置いた。手がかかりすぎるのは何時もの事だが、今日はまたアルコールの力で更に倍増してる気がする。

こいつ…エドの家庭教師を始めたのは、エドが高校に入学した年の夏だった。学習塾の講師をやっていた事を知る知り合い伝に頼まれて、会社が暇な時期に月、1〜2回程面倒を見ている。頭がいいから飲み込みが早く、教える事なんてないように思えたが、教科による好き嫌いが異常に激しくて穴を埋めるのに今でも四苦八苦している。

いつの間にか物凄く懐かれて、こうして遊んだり買い物をしたりする時間も少なくない。嬉しいがちょっと困った事もある。こいつがとんでもなく可愛いのだ。
好みというのもあるが、とにかくエドは可愛い。これは事実だ。色白に細身の体。背は小さく、綺麗な金髪は長くして一つにまとめている。中性的で整った顔立ちもお世辞でなくモテるだろうと思う。が、振られ続けているらしい。需要がなければ供給に意味はないとよくごちている。世の中はよくわからないな。

「おれさ〜、やっと、やっと好きになったんだよ。なのにさ〜振るなんてさ〜」

「わざわざ頑張って好きになる事に意味はあるのか?、好きでもないなら付き合わなければいいじゃないか」

「だって、おれはおれの本命から好かれてないから、しかたないじゃんか」

「…他の恋で紛らわそうなんてそういうのは上手く行かないよ。そんな簡単じゃない」

「簡単じゃないけど!でも!!…未練たらしくしててもしかたないじゃんかあ〜!」

変な発音でぐずってきたから頭を撫でてやる。はいはい落ち着けとか言いながら単に触りたいだけなんだけど。

「エドには良い所は沢山あるよ。そんなに落ち込むな。本命も代わりも忘れたらどうだ」

「…俺の、さ。俺の本命の話していい?」

「前にそれ聞いたけど教えてくれなかったじゃないか」

正直、エドが想いを寄せてる相手は気になるが、ノロケられたら嫉妬してしてしまいそうで怖い。それほど迄にこの子を気に入っている。でも今必要なのは憂さ晴らしの相手で嫉妬されたい訳じゃない。

「綺麗な人なんだ。優しくて、すごいモテると思う」

「高嶺の花ってわけだ。高校の同級生か」

「ううん。…年上」

「先生か。ありがちだな」

「ありがちとか、いうな。俺は、好きなんだから」

「もしかして…物理の先生、とか?。俺が教えるようになってから急に点数上がったよな」

「ちがーう。なあ、30才くらいから見たら、17才は子供かな」

「ガキだな。手を出したら犯罪者だから恋愛対象には難しい」

「前もおんなじ事言った。あんたはそう思うんだな」

真っ赤な顔がしゅんとして溜め息をついた。先生に恋心なんて、思春期に一度は必ず通る道で、綺麗なお姉さんなら尚更の事。だが俺くらいの年かと思ったら微妙に現実味が出てきて、いかん、少し妬けてきた。

「忘れる。もう、全部忘れる」

「そうしとけ。いつだって出会いはあるし、お前は可愛いからすぐに大切にしてくれる人が…」

自分で言ってて苛々してきた。八つ当たり気味に強く息をついて、言葉を切ってしまった。その様子に不安そうにじっと見つめてくるから何かしてやりたくなる。この可愛さは庇護欲と一緒に過虐心までお煽ってくれるから危険極まりない。

「エドはさ、可愛いと思うんだ」

「可愛い可愛いって、俺、男なんだけど」

「…可愛いよ」

そっと伸ばした手でエドの頬を撫でる。柔らかくて、瑞々しくて、その先に触れたい欲求に呆気なく負けた。
逃がさないようにゆっくりと抱きしめて、腕の中に閉じ込める。今ならまだ親愛の情でごまかす事も可能だが、抑えるのも嘘をつくのも、見えない相手にちりちりと嫉妬するのももういやだ。
嫌がられても丸め込む自信がある自分は最低な大人だが、最低と言われてもいい。エドに触れたい。

抱き締めながら、額や耳元に唇で触れる。迷うことなく唇を重ね、舌でこじ開けて侵入する。綺麗に並んだ歯を舐め、舌の裏を舐め、口内をくまなく蹂躙する舌に細い腰が身じろぎ離れようとするので、がっちりと寄せて密着させる。

「…ん……ぅ……」

不慣れな様子が愛しい。小さな舌に自分のを何度も絡めて吸い上げる。隅々まで味わうように舐めて、すぐになんか離してやらない。
腰にまわしていた片手は段々と降りて、小さな尻を撫でたり太股を揉んだりする。ズボンの縫い目をなぞって辿り、指先は前にまわるぎりぎりの所で止めて強めに擦って熱を煽る。

「……ぅあ…」

いいところに当たったらしく、上擦った声が漏れる。逃げようとするから片腕で逃さないようホールドは崩さない。

「良くなってきたか?、このままじゃ苦しいだろ…エドワード」

まだ触れていないが、相手の状態に見当はつく。甘いキスを繰り返しながら、半分覆い被さるような態勢を取って準備万端。顔を覗けば困ったような表情で見返してくる。止めるかどうかなんて聞いてやるつもりは毛頭ない。シャツの上から薄い胸を撫で、ボタンを幾つか外す。喉元や鎖骨を手で撫でていると表情が少し変わってきた。

「ひと…きたら、ど、すん…の」

「どうしようか。驚くかもね」

緊張と背徳感から小声で尋ねてくる。ここのカラオケ屋は監視カメラも付いていないし、店員も呼んだって来やしないような店だけど、敢えて隠した。知らないほうが楽しい事は世の中に沢山ある。薄い壁の向こうからヘタクソな歌とか、馬鹿みたいな笑い声とか聞こえてきて、人の気配と不安そうなエドワードに煽られる。ああ、なんて安っぽい。風俗店のネオンやAVのパッケージだって、下卑た安直さに煽られてる所があるのかもしれない。

煽られるままに唇を重ね、同じように相手を煽る。手のひらは体を撫でながらゆっくりと前にまわり、今度こそ核心に触れる。エドの中心はすっかり固くなっていて、もう少し焦らそうと思ったけど俺が欲望に負けた。ベルトを外して下着ごと腰からずり下げる。不安になったのかエドの手が遠慮がちに裾を掴む。

「大丈夫。楽にしてやるだけだから」

言葉の意味はわかっているのだろうか。相変わらずエドは少しだけ不安そうにしたまま抵抗もしない。幼いペニスを握りこんで、上下に緩く扱いてやる。

「ふ、ぁ……ッ……」

か細く鳴くからまた興奮する。手の中が先走りに濡れ始めて、ここが静かな場所だったら淫猥な水音も聞こえていたかもしれないと想像してまた煽られる。もっと、もっと強い刺激を。

「エド、きもちいいか?、ほらこれ、舐めて」

エドの唇に指を当てて舐めるように促す。小さな唇は従順にそれを受け入れ、舌を絡めて舐めはじめた。この絵面だって相当いやらしいんだ。服は肌蹴てズボンは下ろされ、ペニスを弄られながら相手の指を舐めしゃぶる。本当はエドに俺のも舐めさせたいけど、物事には順番というものがある。口のまわりを涎でべとべとにしながら拙くしゃぶる動きに合わせて手も緩く扱く。指の腹を裏筋に当てて押し上げるように動かすと、先端からまたとろとろと先走りが流れる。

「いい子だ。エドはかわいいね」

濡れた指を離させ、よくできたご褒美とばかりに頑張った唇を舌先で舐めてやる。細い腰を少し浮かせて抱え直すと流石に焦ったのか服を引いて見上げる。

「あんたは…あんたは、楽しいの?」

帰ってきた言葉が予想外で少しだけ驚いたが、これが牽制でなく気遣ってくれているなら尚嬉しい。

「勿論。あんまり可愛くて、もう俺もこんなだ」

エドの手を取り自分の股間に触れさせる。嫌がるかと思ったが、大きな思い違い。欲を含んだ表情で、小さな喉仏が、ごくり。と動くのが見えた。拒否されなかった時点で気づくべきだった。何故彼が自分を呼び出したのか。酒の力なんて使ってまわりくどく恋の話なんて始めたのか。

「エドは俺の事が好き?」

「…ばれてた?」

「いや、今確信した。嬉しいよ、エドワード」

「遅すぎだよあんた。鈍過ぎ!」

ぎゅうっと抱きしめて愛撫は一時中断。でもすぐに淫行再開。お互い待てるならこんな所で事を進めてなんかない。今からホテルは空きがないだろうから、やっぱりここで一度収めよう。体を起こさせ足の間に横抱きにするみたいに座らせる。片手は股間へ。濡らしたもう一方は下から回して尻へ。

「ひゃ…っ」

アナルの周りを撫で、ぬめりに中指を一節だけ中に差し入れた。胸元にすがるようにして抱きつくエドが身を硬くする。力を抜かせようと少し早いペースで手を動かすと、意識が前に向くのか指を締める穴が少しだけ緩む。

「…あッ…は、…んや……っあ……」

息を荒くしながら、上がる声も多くなってきた。前から垂れるぬめりがアナルまで濡らして、ペニスを扱く手もアナルを柔く弄る指も、くちゃくちゃに濡れて淫猥さに目がくらむ。

「ああ…いやらしいね。見られながら弄られると、興奮する?。エドはアナルも好きみたいだね」

「ふ、あっあ……ゃ…っ」

「二本、入ってる。奥よりも入り口が好きなのかな、ほら、また前も漏らして…気持ちいい?言ってごらん」

「き、もち…ぃ……っは、…んん…」

安っぽい台詞にいくらでも煽られる。一本から二本と数を指を増やして穴を広げられながら、子供が涎を垂らして喘ぐ。自分からも何かしたいらしくて、俺の鎖骨や首筋やらに舌を這わせてぺちゃぺちゃ舐める。この先があるとしたら、数回慣らしてやればこっちで楽しむ事も可能だろう。

「もっ…や、あ……っ!!」



*****






始発の電車に向かって、どこからこんなに沸いてくるのかと思うくらいの人間が駅に向かう。俺らもその内だから仕方ないけど。
ちょっとふらつくエドワードの腕を掴んで支えながら、ガラ空きの電車に乗り込む。話し掛けにくそうにしながらも、何か言いたいらしくてちらちらと見上げてくる。助け舟くらい出してやるよ、いいもの見せてもらったし。

「次はいついけばいいんだ?、そろそろテストじゃなかったっけ」

「来週の水曜日がいい。…親、いないし」

「・・・・期待してもやらんからな」

「えっなんで!だって俺なんもさせてもらえなかった」

「なんでじゃないだろう。まずは勉強、テストの成績次第ってのもいいな」

「ひでぇ!そんなん横暴だ!」

「嫌なら止めようかね『ご褒美』の制度もいいかと思ったんだけど」

眉間にシワを寄せて悩む思春期真っ最中は、今夜を取っ掛かりに関係を進めたいらしい。勿論本命への想いを忘れるなんてのは前言撤回だと、終わった後に甘えるように呟いていた。

「英語、もうちょっと良くなったら、なにしてくれる?」

「元々悪くないからな…そうだな。何がいい?」

「あんたの部屋に泊めて」

「でも、手は出さないからな」

「意味ねえよそれ!。じゃあ、古文の成績が上がったら?」

「そりゃデカイな。そうだな……」

身を寄せて、耳元で『口でしてやる』と告げたら、絶対頑張る!と真剣な表情で拳を握ってみせた。明るく現金だが、内容は犯罪に引っかかってるからもう少し謹んで欲しい。
かくして、家庭教師はおきまりのAVみたいなご褒美で、生徒の成績を上げる事になりそうだ。





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あきゅろす。
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