七匹目


 俺は大変なショックを受けていた。
 今まで、俺がぐうたらして朝起きるのが遅くても、アルは「いい加減起きなよ!」と声をかけて来ていたのに、こないだは「いちゃいちゃしてないでそろそろ起きなよ」と言われてしまったのだ。
 アルは、大佐と俺が寝てる姿は見ているが、その、ちゅうとかしてるのは一切知らないはずだ。いや、知っているのか?見たことあるのか?怖くて俺から聞けない。
 大佐はあれから、夜とか朝とか、一緒に寝ている時にキスをねだるようになった。ねだるというか、されるというか。ほっとくと何時までも止めない。気持ちが良くて困る。下手すると男の沽券に関わる事態になるので、最近は強く拒否して止めさせている。
 俺が嫌がっているとわかると、大佐は深追いはしない。しゅんとして大人しくなる。なんでこうなったんだろう。口を舐めるのは動物同士のコミュニケーションなのだろうか。デンはそうでもなかったけど、犬は結構そういう傾向にあるのは知ってる。猫はわからん。
 一つ確かな事があるとすれば、俺のファーストキスは猫(大佐)に奪われてしまったという事だけだ。これこそ墓場にまで持っていく秘密だ。

 今日も大佐は、朝、俺と一通りいちゃいちゃして(残念ながら、俺はまた誘惑に負けた)、自分で着替えて髭を剃って、身支度を整えてから朝飯を食べた。生活の習慣として体に馴染んでいる事は、自主的にやってくれるから大変助かる。最近はお手伝いの延長で洗い物も進んでしてくれるようになった。猫とはいえ大佐だ、それくらいはできてもらわないと困るけどな。
 本日は午前中からアルが出かけてしまった。俺らは交代で出かけては、買い物をしたり古本屋の書庫を漁らせてもらっているのだが、今日に限ってアルの番だなんて。でも、そんな事言えないので快く弟を送り出した。
 穏やかな日差しが差し込む、暖かい午後。大佐も相変わらず日向ぼっこ。俺はどうしても、大佐との物理的な距離が気になってしまう。猫相手に変に意識してるのも、こっちが盛ってるみたいで恥ずかしい。大佐が何考えてるのかがわかれば、もう少し落ち着いて生活できるんだけど。
(いや、わかった所で解決にはならないな…)
 光に照らされ黒く光る髪の毛を眺めながら、ソファーでため息をつく。ふと、大佐が起き上がってこちらに向かってきた。
「な、なんだ?おやつはまだだぞ?」
 大佐は心配そうに、俺の顔を見つめる。
「大丈夫。心配すんな」
 いつものように頭を撫でてやると、嬉しそうに笑って俺の胸元に頭をぐりぐりと押し付けて甘えてくる。実はもう、どっきどきで平静を保つのが大変だ。大佐の匂いが近い。肌の温かさが近い。今朝だって、あんなことしてたのに。
「あ……」
 完全に読まれてたみたいだ。抱きしめられ、ソファーに倒され、当然のように唇を重ねてきた。一応体を押し返して抵抗するが、情けない事にあっさり負けてしまう。
 深く唇が合わさって、舌が絡まって、大佐がのしかかる体重が心地よい。
「…っは、」
 離れた唇の間に、唾液が糸を引く。明るいとこんなものまで見えるのか。あまりのいやらしさに、背筋がぞわぞわする。興奮が止まらない。もう一回見たくて、今度は舌同士で唾液を絡めるようにキスをする。ゆっくり離すと俺の舌先と大佐の舌先の間で糸を引く。うわあ、これどうしよう。堪らない。
 大佐が俺の頬を舐め、耳を舐め、首筋へと鼻先をうずめる。俺も何かしたくて、黒髪に指を絡め近くなった猫耳を柔らかく食むと、応えるように大佐の腿が俺の股間をぐ、と押し上げた。
「…っ!、ちょ、それダメ…」
 いい感じに優しく押されて、耳の穴までぺちゃぺちゃ舐められて、下半身はどんどん育っていく。再び深くなるキスと、繰り返し脚に刺激されて、俺の中心はもう言い訳出来ない状態だ。頭がぼうっとして、何も考えられない。すごく気持ちいい。どうしたらいいんだろう。
 大佐の手が、俺の腹をなぞってズボンの上から股間を揉む。掌が形を確かめるようにさする。彼も性行為をしているのだと確信して、思わず目を見開く。そして俺は…



A、慌てて大佐の体を押し返すと、転がるようにして逃げた。
B、そのまま快楽に負けて、自分からズボンの金具を外した。

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