日記小話
ごちそうです
※相変わらずの大佐←←←←←←兄さん


久しぶりのセントラル。報告は義務だけど、実はいつも緊張する。
中尉から大佐が仮眠中とのことを聞いて、そっと執務室に入った。

肌寒い室内に、シャツ姿でソファーにごろりと横になり眠っている。寒いらしく自分の腕をさすっている。なぜか上着が見あたらないので、俺のコートを脱いで被せてやる。
こういっただらしない姿は、最近になって知った。恩人だけどひたすらいけ好かなくて、嫌みな奴だとしか思ってなかった。それなのに。
赤いコートを手繰り寄せ、無意識に抱き締める仕草にひっそりと体温が上がる。息を詰めて、見つめてしまう。
いつからか俺は、後ろめたくなるような感情を大佐に抱いていた。

果たしてこれが恋かと言われたら、ちょっと自信がない。具体的に言えば、そう、目の前にあるこの男の手に触れたい。触れたい以上に触れて欲しい。
もし、こいつに気付かれず好き勝手できるなら、迷わずこの手を取り、指を舐めると思う。長くて節ばった指。人差し指から順番に口に含んで、指の股を一つづつ丁寧に舐めて。親指は特別だ。飴玉みたいにしゃぶってみたい。
頬や顔を撫でさせたら良いかもしれない。こいつからは頭を撫でられた事も無かった筈だ。
頬とか耳とか、首筋とか。勝手に擦り付けるだけでもいい。大佐の手だけが壁の穴から出ていて、俺がこっちにいる事がわからなければやりやすいのに。
ああでも、そんなんで俺の欲望は満たされるんだろうか。相手に抵抗が無いとわかれば、エスカレートしちまうと思うんだ。首から胸へ。胸から腹へ。腹から…。うあー、それは考えちゃいけない事なのかな。でも、考えた事ないと言ったら嘘だごめんなさい。

「う……」

大佐が身じろぎ体勢を変えた。こっちに顔が向いて、それだけで動けなくなる。
睫は黒くて長い。色が濃いから存在感があるように見えるのかもしれないけど。
触りたい。とにかく触りたい。よくマンガにあるような「寝てる相手に、気付かれないようにキスする」とかは本当に無理だと思う。そんな事言ったら、穴から大佐の手が出てる状態の方が有り得ないけど。

間近で眺める事しか出来ない、勇気の無い自分が憎たらしい。それでも、この寝顔だけでも今の俺にはごちそうです。


2010/8/31移動
2009/11/3

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あきゅろす。
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