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●有刺鉄線で繋ぎ止めた…三天才
病んでる
バイオレンス
変!態!な三天才

有刺鉄線で繋ぎ止めた

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嫌な音がした。
べきだか、ばきだか、肌が激しくぶつかって痛む音。
次いで、大きなものが倒れこむ音。
藤原は驚いて亮の部屋に飛び込んだ。
「吹雪、吹雪!どうしたの、止めるんだ」
「五月蝿いよ」
藤原は戸惑いながらも親友の両肩を掴んで叫ぶ。
しかし吹雪は冷たい視線を寄越して制止をはねつけただけだった。
「亮だって悦んでるよ。ほら、」
邪魔が入ったせいか吹雪は面白くなさそうにそっけなく言う。
常の明るい彼とは別人のようだ。
亮は真っ赤に腫れた右頬をそのままに、静かに眉を歪ませて吹雪を見つめていた。
髪は乱れ、口端から細く血が流れている。
惨状を目にした藤原の顔はみるみる蒼白になる。
目の前の光景が信じられないというふうに、目を見開いて泣きそうな顔をしている。
「喜んでるわけないじゃないか、いい加減…」
「悦んでるよ。亮、次はどうして欲しい?」
「殴ってくれ、もっと強くだ」
吹雪が優しく問うと、床に転がったまま亮が低く答えた。
それじゃあと吹雪は一拍置いて、彼の腹に蹴りを入れた。
「っか、は」
どご。これまた嫌な音がして、長い足が鳩尾へと吸い込まれる。
一瞬息が詰まったのだろう、なんとも痛々しい声があがった。
藤原は思わず息をのんで、びくりと身体を跳ねさせた。
「痛い?」
「い…たい」
吹雪がさらに優しく問うと、亮は息をひゅうひゅうと漏らしながら小さく微笑んだ。
吹雪も満足そうに微笑んでみせて、脇に置いてあった布を掴む。
壊れやすい、大切なものを扱うように亮の首をもたげ、布を通して後頭部で結わえた。
闇色のそれは、いわゆる目隠しというものだった。
「何してるの、君たちおかしい…!」
藤原はどうすることもできず、ただただ驚いておろおろと成り行きを見ている。
二人は藤原が見ていても、止めに入っても、お構い無しのようだ。
明らかに異常なことをされている亮は、微かに笑みを見せながら愛しそうに吹雪の行動を受け入れている。
彼の視界を奪った吹雪は、こちらも微かに口角をあげながら愛しそうに亮の足首に縄をかけている。
そうして幾重にも縄が巻かれ、色白の肌はさらに血の気が引いて真っ白になった。
「亮」
「吹雪、」
互いに小さく名を呼びあった後、吹雪は亮の首筋にタートルネックごと噛みついた。
薄手の生地をあっさりと貫通し滑らかな肌に到達した犬歯は、なおも深く食い込んでいく。
つ、と血が滲み出て灰色の布地を暗い闇色へと染め上げた。
「吹雪、吹雪、ふ、ぶき…っ」
亮は明らかに痛みに顔を歪ませているというのに、吹雪の後頭部を手探りで掴み、自分の首にぎゅっと押し付ける。
吹雪も亮に導かれるまま歯をたて傷口を広げていく。
痛みと足首の縄でバランスを保てなくなった亮は吹雪にもたれかかり、吹雪は亮を抱くように支えた。
ある程度の深さで侵攻を停止し、しばらく歯を突き立てたまま固まる。
肩を支えながら顔を離した彼の唇には、艶やかな深紅の血が滲んでいた。
「やめるな、もっと深く噛んでくれ」
「これ以上やったら後がきついよ、この位で我慢して」
吹雪が、かすれた声で懇願する亮に優しく優しく告げながら、タートルネックをめくりずらして傷口をあらわにする。
ぴちゃり、水音を響かせながら裂けた皮膚に舌を這わせた。
「吹雪…好きだ、」
「僕もだよ、亮」
傷が濡れる痛さに時折身体を跳ねさせながらも、亮は恍惚と呟いた。
吹雪もすぐさまそれを受ける。
溢れ出る血を大方舐めとると、茫然と動けずにいる藤原を振り返って妖しく微笑した。


「さあ、優介もまざろうか?」
僕ら三人、闇の世界に堕ちていくのだ。



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