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夢にまどろむ芸術作品…1048
未満な十ヨハ

夢にまどろむ芸術作品


彼はいつも通りオレの部屋を訪ねてきて、オレもいつも通り彼とデュエルして。
クロノス先生に呼びだされて、彼に断りをとって30分くらい抜けて。
急ぎ足で戻ってきたら、ヨハンは座ったまま静かに眠っていた。
なんとなく起こしがたくて、そのままそっと正面にまわる。
滅多に見れない寝顔をじっと見つめた。
(綺麗…)
目を閉じた彼は美しい芸術品のようで、思わず見惚れてしまった。
北欧出身の彼は、モンゴロイドたる日本人には無い魅力に溢れている。
日焼けをしない肌とそれに映える形のよい唇、スッと筋の通った鼻、少しだけ深めの掘り。
睫毛は長く、当然ながら色合いは青みを帯びていた。
また美しさもさることながら、あどけない寝顔が普段の彼より幼く見えて可愛らしい。
見れば見るほど愛おしい。
(…)
白磁の肌にたまらなく触れたくなって、自分の右手が無意識に動く。
つっ、と頬をなぞれば、少し冷たい滑らかな感触が神経に伝わってきた。
「ん…」
ヨハンがわずかにに身じろきする。
覚醒は近いようだ。
起こしてしまう覚悟で、手のひら全体で頬を撫でる。
やっぱり良い感触だ。
「ぅー…な、に」
寝ぼけたとろい口調で反応するヨハン。
目は閉じたまま眉を歪ませる。
「そだ、今、じゅーだいの部屋に…」
自分の居る場所を思い出したのか、緩慢な動作で目をこする。
ゆっくりと瞼が持ち上がって、眠そうな翡翠色が覗いた。
「はよ、ヨハン。戻ったぜ」
視線を合わせながら笑って挨拶する。
「はよう、俺、寝ちゃった、か」
まだ夢の余韻を感じさせる、たどたどしい台詞が返ってくる。
「別にいいぜ、オレが待たせたんだし」
オレが再度笑いながら言うと、
「さんきゅ」
彼はいつもの爽やかな笑顔を浮かべて礼を言った。
「よし、デュエル再開なっ」
今夜も互いが疲れるまで決闘合戦。
そうやって今日の夜もゆっくりと更けてゆく。


ああ、
決闘中にふと彼を見やったら、先程の寝顔と重なった。

むしろあんな綺麗な光景が見られるのなら、またオレの前で眠って欲しい。
そしてあわよくばまた、彼の頬に触れたい。
右手にかすかに残る感触が、少しうずいた気がした。

その欲求を生み出す感情を自覚するのは、もう少し先の話。

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あきゅろす。
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