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君の味・・・十ヨハ十

君の味


「さるみあっきぃ?」
ヨハンがニコニコしながらつまんでいるのは、黒く光沢のある奇妙な物体だった。
食べ物に見えるのに、なんとなく食べ物じゃないみたいな見た目だ。
「そ。俺の国のアメ玉!」
十代のいぶかしげな表情もなんのその、彼はサルミアッキで溢れている紙袋を抱えて幸せそうだ。
「なんだ?日本ではやっぱ知られてないんだな」
「初めて見た」

事の発端はかれこれ2週間前。
お腹を空かせたヨハンがそれを訴えると、偶然某大手製菓会社の飴玉を持っていた明日香が腹の足しになればと彼に与えた。
初めてを某飴を食べたらしいヨハンはその美味しさにいたく感動したらしかった。
それを見て十代が「日本ではミ○キーはママの味なんだぜ!」と誇らしげに言い、ひとしきり日本の菓子について語った。
その流れでその日の夜は、いつもの面子でお菓子を持ち寄ってお菓子パーティーを催し、大いに盛り上がったのだ。
その時以来日本の菓子をいたく気に入ったヨハンは「じゃあ今度俺の国の味を持ってくるよ!」と張り切った。

そんなこんなで冒頭、である。
どうやら先日国の家族だか友人だかに、故郷のものを沢山送ってもらったようだ。
「さっき会ったジムは知ってたぜー」
そう言いながらもまたひとつ黒光りする飴を口に放り込む。
十代の方も、妙な外見のせいで食欲はあまり湧かないものの、美味しそうに頬張られているのを見て興味は湧いてきた。
「…うまいのか?」
「俺は大好きだけど。ジムはあんまりらしい?」
ヨハンは袋から包みをひとつ取りだしてほい、と手渡してくる。
十代にしてはためらいがちに受け取り礼を言って、薄い包装紙を解いてまじまじと掌の菓子を眺めた。
やはり菓子にしては真っ黒い。しかも
「なんか匂う…」
サルミアッキはツン、と鼻につく匂いがして、なけなしの食欲を更に減退させた。
「あぁ、アンモニア?とかの匂いがあるみたいだな」
ヨハンはなんともなしに言い、十代が国の味を体験する瞬間を見守っている。
小さい頃から親しんでいる彼にとって、匂いなど慣れっこらしい。
それでも日本人にはどうも親しめない芳香だ。
「腹壊したりしないよな」
「毒でも薬でもなく食い物だぜ?」
思わず念を押してしまうが、返ってくるのは安全保障。
十代にはどこをとっても食べ物とは信じがたかったが、食べた感想を早く聞きたいと待ち構えるヨハンの視線に堪えられず、腹を決めて口に入れた。


「どうだ!?」
犬のように目をキラキラさせて尋ねるヨハンに、
「まずっ…」
悪いと思いながらも正直に感想を述べた。

*

しかし、この後十代は「この程よいまずさがたまらないぜ☆」とか言ってサルミアッキを食べまくっていたという。


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あきゅろす。
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