●あなたのしずくがとまるように…ヨハ使途 ヘルヨハン→ユベル表記 ヨハヨハ兄弟 フラれた傷心ヘルヨと慰めるヨハン あなたのしずくがとまるように 「ねえお願い」 僕を、ころして。 この世に一人の大切な恋人に拒絶されて、元々繊細で脆かったユベルはとうとう崩れてしまった。 痛々しい程の悲しみをたたえて哀願する、充血した白目と危うく輝く橙。 袖を掴む左手をやんわり取って、そっと歩み寄る。 子供のように泣きじゃくるユベルを優しく抱きかかえると、彼はしゃくりあげながらも泣き声を止めた。 それを確認してからユベルの頭を自分の肩にぐっと引き寄せて、出来るだけ甘く囁く。 「俺だけは見捨てないよ」 世界中の誰がお前を捨てたって。 たった一人の血を分けた家族を見捨てたりなんか、するもんか。 ゆっくり頭を撫でてやると、ユベルの肩がふるりと震えた。 「苦しいんだ、ヨハン、ヨハン、」 回した腕をきつくして、しばらく何も言わないままでいる。 「傷ついっ…たんだ、痛、かったんだ」 次第に嗚咽に飲まれていく悲痛な訴え。…そう、彼こそがユベルの全てであったから。 それだけは変えようのない事実だから、自分は自分として彼を受け止める。 ああ、声は止んでも涙は止まらないんだ。 まるで傷口から溢れ続ける鮮血のよう。 どれだけそうして立っていたのか分からないが、ユベルの声がもれ出る吐息の様に掠れてきた頃。 ありがとう ユベルが涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、唇だけでそう言った。 だからこちらは何も言わずに、まぶたにひとつキスを落とした。 *back*#next# |