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flower*
王道副会長(1)

 雅人の期待が高まってくる。何故かって、セオリーなら、ここで美人副会長さんのお出ましだからだ。
「こんにちは」
 ついに、彼が茂みから姿を現した。

(!!)

 ――――神様有難う御座います!
 サラサラと靡く、プラチナブロンドの髪。長い前髪は右の方で分けられていて、澄んだ水色の瞳は、彼の知性を表しているかのようだった。

(美人! 典型的な王子様タイプの副会長さん!)

 彼の全身を一通り観察した後、ハッと雅人は我にかえった。何故なら、副会長が笑顔のまま固まっていることに気がついたからだ。
 うわ、いきなり熱く見つめるなんて……流石に、失礼でしたよね?
「すみません、副会長さん。不躾に眺めてしまって」
 眉を下げながら申し訳なさそうに云う雅人に、副会長はようやく、「あ、フフ、気にしないで?」と笑顔を作り直した。
 ――――麗しの笑顔は通常装備ですか。きっと、腹黒なんでしょうね。ふふ、楽しみです。
「僕は天里学園の生徒会副会長、歩堂 冬里(ぶどうとうり)です。今日は、君を案内するよう頼まれてお迎えにあがりました。どうぞよろしくね?」
 ずっと崩れない笑み。口元に貼り付いたままのキラキラ王子様スマイルは、確かに麗しいが、雅人には、あまり心地良いものではなかった。
(王道の副会長さんの笑顔は、苦手です)

 だけど過去有り、萌えますね。
「改めまして、水仙雅人と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
 負けじと笑顔で応対する。
「ご丁寧に有難う……緊張してる? あまり堅くならなくて良いんだよ」
「いえ、お気になさらず。癖、ですので」
「癖? そう、ならいいけれど……。じゃあ、まずは理事長室に案内するね。一通り理事長から説明を受けてから、寮まで連れて行ってあげるから」
「はい。有難う御座います」

 ついてきて、と背を向けた副会長の後を追う。
 背丈は、雅人との身長差を考えると百八十センチ程か。線は細いが、均衡の取れた背中。背筋をピンと伸ばして歩く姿が、美しい。
 ふと、「ねえ、水仙くん?」と声をかけられた。
「はい?」
「水仙くんはなんで、ここへ入学を?」
「…………えっと、家の都合、です」
「へえ、そうなんだ」
 …………。
「じゃあさ、君の、その髪は…………」
「え」
「染めているの?」
 副会長はふらりと立ち止まって、ゆっくりとこちらを振り向いた。

 その表情(カオ)には――――笑顔が、消えていた。

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あきゅろす。
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