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flower*
寮入り(2)

「ふうっ、こんなところですかね……」
 同室者の部屋を無断で開けてしまった自分が悪いとはいえ、汚部屋に我慢ならなくなって、雅人はお節介と自覚はしていながらも一通り掃除をしてしまったのだ。
 といっても、服を畳んで、汚れているものは洗濯機に放り込んで、カップラーメンのカップはまとめて捨てて、菓子類の屑が無数に落ちているカーペットは、近くにあったクルクルで綺麗にして、明らかに起きたそのまま直していないであろう布団は、綺麗に畳んでおただけなのだが。
 それだけでも、かなり違う。主に足の踏み場とかそういう意味で。
「はあ〜思わぬトラップでした……。それにしても、服のサイズは高校生の男子にしては少し小さめでしたね……」
(小柄な可愛い子……なのかな。ふふっ可愛い子ちゃんと同室者、なんて、理想的ですね)
 クス、と笑いかけた雅人だったが、ハッとする。
「でも、この生活レベルの低さ……!」
 いくら容姿が可愛くても、ここまでガサツそうだと、生活していく上でトラブルがあるかもしれない。
 まあ、会ってみないと何とも云えませんね、そう呟くと「失礼しました」と無断で立ち入ってしまった――しかも掃除までしてしまった――同室者の部屋を後にし、今後こそ、自室である反対側の部屋に入った。

「おお、きてますきてます」
 ダンボール箱が沢山並ぶ殺風景な部屋。他には、もう一方の部屋と同じく、付属のキングサイズのベッドと大きな棚がついているだけ。使われていなかったのだから当然なのだが。――いや、もう一つ。部屋の隅の学習机の上に、ノートパソコンが繋いである。
「ふふ、愛用のパソコンもちゃんとセットしてありますね」
 機嫌良く微笑みながら、雅人は早速、荷物の開封と整理に取り掛かった。

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あきゅろす。
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