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flower*
寮入り(1)
 §

 『  叶 凛瞳
  水仙 雅人 』

 寮長に案内された部屋の前に立ち、同室者の名前を眺める。
「かのう、りんどう…………」
「そうだね。君の同室者は、同じクラスの叶君だよ。元気で明るい感じで、良い子に見えたよ。だから、きっと、上手くやっていけると思うな」
「そうですか」
 良かったです、と微笑む。
「っ……! じゃ、じゃあ、僕はっ、此処で失礼するね!」
「ええ。有難うございました、寮長さん」
 人の良い寮長は、顔を真っ赤にしながら長い廊下に消えていった。

 ドアノブを回して部屋に入る。高級ホテルの一室と見紛う程の広さと清潔さを持った綺麗な部屋だった。
「すごい! 想像した通りです」
 浮かれた気分で奥へと進むと、アンティーク調の壁紙やインテリアが洒落ている、深緑とクリーム色で統一された落ち着いた雰囲気のリビングルームが広がった。
「ふふ、緑は、和みますね。目に優しい色ですし」
 理事長室にあった物には劣るが、しかし上質な座り心地のソファに腰掛けて上機嫌でお気に入りの歌を口ずさむが、すぐ荷物のことを思い出した。
 午前中に部屋に届けられたという荷物。愛用のPCも業者によって既にセットされている筈だ。
「部屋って、どちらでしょう……」
 リビングを挟んで左右に一つずつ扉がある。これが個人の部屋ということだろう。
 分からない以上勝手に開けるのも躊躇われるが、一刻も早く“コレクション”の状態を確認したかった。
 どうせ、二択なんだ! という思いで左の扉を開くが――――

 ごっちゃあ〜〜〜〜

「……な、な、なにコレ!?」
 脱ぎっぱなしの服に、カップラーメンのカップ(殻)の山。大きいベッドの掛け布団はグシャグシャ。エトセトラ、エトセトラ…………。
 雅人なそんな光景をみて小さく悲鳴を上げた。
 持ち主の乱雑さが十二分に伺える。
「寮長……ホントに、良い子なんですか?」
 元気というのは本当なのだろうけど。

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