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短編集
甘さの秘訣

「送って行かなくて、ホントにへ〜き?」

カカシが私の顔を覗き込んで聞いてきた。今日は、カカシと一週間ぶりに会えた日で、行きつけの居酒屋で一杯終えた後だった。
「ぜっ、全然平気ですよ!!これでも中忍なんで!!」
「ソコじゃないんだけどね…俺が心配してんのは。」
苦笑いしながらも、カカシの足が向かうのはリョウの家。

「ちょっ!結構ですよっ!カカシさんも、任務帰りなんですから家で休んだ方がっっっ!」
「俺はへ〜き。こんなんでへこたれていたら、上忍は無理だしね。」
見えないはずの口元が、はっきり見えた気がした。


ーーああ。やっぱり私は好きなんだなぁ。


なんて思っちゃうのもこの瞬間だったり、この惚れて見とれたのを見計らって手を握ってくるのもカカシである。

「ちょっ!ちょっと、カカシさん!?」
「リョウちゃん。俺と手を繋ぐの…嫌?」
首を傾げで見下ろすその目は青く、私の好きな声で囁く。


イエ。むしろしてください!


ーっなんて!言えるわけねぇ!


「嫌じゃ…ないですが///」
「んじゃ、きーまりっ!」
「!!!」
あっさりと笑いながら、カカシは私の手を握ってきた。手袋をしていない生身の手。ちっともあったかくない、冷たい手。

「カカシさんの手、冷たくて気持ちがいいです。」
「リョウちゃんの手はあったかいね〜。子供体温だからかな?」
「失礼ですね!?どーせ、私は子供体温ですよーっだ。」
拗ねた振りして顔を背けるのは、きっと真っ赤になった私の顔を見せないため。ただ手を繋いだだけで、赤面するなんて私はいつぞやの娘のつもりなんだろう。そんな私の葛藤を知ってか知らずか、カカシはぎゅっと握ってきた。

「子供体温?い〜じゃない?俺の手冷たいからいつでも暖めてもらえるしね。」

殺し文句だ…本気で死ぬ…

ほかの男から聞いていたら
『くっさい台詞』
なんて終わっていた言葉達がカカシから出てきた途端、素敵な言葉に変化した。

「なんて台詞ですか…」
「リョウちゃんだから言うんだよ〜。」
恥じることなく暴露しているカカシを見ると、私の彼氏であるんだなぁ…なんて実感する。本来なら高嶺の花として存在するカカシは、私にとっては釣り合わない彼氏だった。



中忍時代は『この思いは一生伝えないでおこう』と考えて、カカシを見守る日々を送っていたにもかかわらず、『友人』としてカカシと飲んだときにポロリと口から転げ落ちてしまった。

『リョウちゃんは、好きな人はいるの?』
『え〜?そりゃいましゅよ〜?』
『忍?』
『しょーでっす!!スッゴく高いんですよぉ。』

『ふ〜ん、上忍だね?』

『ひゃい。』

カカシとの会話の中で勧められる酒はいつもよりペースが早く、それでもって強かった。私の頭の中はほとんど機能はしていなく、だからその時のカカシの顔がだんだんと笑みを浮かべていくのを私は見ていただけだった。


『俺…だね?』

『ひゃい。』


後のことは覚えていない。気がついたら朝で、見慣れない部屋。


『あ……れ…?』
自分の体を誰かの腕が拘束して自由にならない。何故でしょうか?目の前にあるのは誰かの胸板で…
『アツシ?』
『ちょっと。アツシってどいつ?』
『!!!』
唯ならぬ殺気を感じて顔をあげれば、端正に整われた綺麗な顔が目の前にあった。

『カッ!カカシッ!!』

『あっ。その呼び方いいね〜。』
『ど…どうして!?』
『やだな〜。告白されたからオーケーしたでしょ?』
『へっ?』
記憶には…ある。でも、オーケーって…
『オーケー…って、恋人ってことですよ!?』
『リョウちゃん、そんなことも分からなかったの?』
『違います!!


…本当に…ですか?』


嘘だとしたらとんでもなかった。幸い、服は着ていたからそこまでに及んではいないのだろうけど…もし、違う意味での『オーケー』ならば私は一生恋なんてできないだろう。しかし、カカシは…

『本当。好きだよ、リョウ』

と言った。嘘だ、と思ったがその瞬間のカカシの目は真剣で、私は嬉しくて泣いてしまった。そんな私をカカシは優しく微笑みながら抱きしめてくれたのを今でも覚えている。







「考えたら、あの時酒の中身は強いし、ペース早かったし…絶対にカカシさんの策だ。」
うんうん、と台所でおつまみを作っているときに1人納得していた。
「ちょっと。何を勝手に人のせいにしてんのよ。」
「ぎゃあ!!」
「あらま。ひっどい叫びよう。」
まったく気配の欠片も感じさせずにカカシが後ろに立っていた。しかも…

「カカシさん!なっなんで上半身裸なんですか!?」
「お風呂上がりだから?」
「それはわかってます!!早く服を着てください!」
「え〜。」
「え〜、じゃないです!早く着てくださいよ。」

あまりに美しすぎるその裸体に見とれてしまうのを防ぐために台所を向くが、依然カカシは動こうとはしない。それどころか、体を密着させリョウの肩に顎を乗せている状態だ。

「…カカシさん?」
「んじゃ、リョウちゃんから『好き』って言ってちゅ〜してくれたらいいよ。」
「えっ?」
カカシはニコニコ笑いながら私の方を見た。
「いち、に、さん、はい!」


「……」



「リョウちゃ〜ん?」
そう言いながら覗き込むカカシを慌てて押しのけた。
「準備するんでっっ///」
カカシの横を無理やり通り抜けてリビングに向かった。


「くくっ。素直じゃないねぇ〜。」


カカシは見事な照れ屋のリョウを笑いながら追いかける。


リョウには口が裂けても言えない。本当はあの酒の場所をセッティングしたのも、めったに酒場に現れないリョウを紅に頼んで無理やり連れてきてもらったのもカカシだということを。
そして照れ屋なリョウを逃さないために毎日愛を囁いて、カカシ以外の男を脅しまくったことも…



ーーー誰にも渡したくないしね


さあ。
今度は照れ屋な彼女から愛を囁いてもらいましょうか?


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【誰よりも好きだと言わせてよマイディア】 by澪標




============================初☆投稿作品です。
思い切って踏み込んだもののまだまだペーペーの新人ですので、恐縮です。
読んでくださったこと本当にありがとうございます!


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