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私はエリカの隣に座っていて、机を挟んだ向かいに仁王が一人で座っている。私は落ち着かない気分のまま紅茶をちびちび飲んでいた。
会話は一向に盛り上がりを見せない。仁王は何を聞いても淡泊な返事しか返さないし、私はというと何だかいつものような調子では喋れずにほとんど聞き役に徹していた。エリカが喋ってはいるけど、後の二人がそれだと必然的に会話は途切れがちになる。
気まずいと思いつつ、特にこれといった話題も提供できない。
しかしここまで反応の薄い相手とよく一緒にいられるなぁ、と私は仁王を盗み見た。何を思ったか、彼は角砂糖を一つ摘みあげてまじまじと観察している。
さっきから、この人の笑顔といえるような表情はいっさい見ていない気がする。時折みせる口の端をくっと持ち上げるあの皮肉っぽい笑い方が笑顔だとしたら、やはり仁王はそうとう屈折していると思う。
私にだけあんな態度なのかと思ったら、彼女のエリカにまで同じ態度なんて。
とぷん、と指先で弄んでいた砂糖を紅茶の中に落とし、ふと視線を上げた仁王としっかり目が合ってしまい、私は慌てて目を逸らした。
温くなった紅茶に砂糖を入れたって溶けないだろう、と思いながら。
「それ、おいしい?」
「ん、あぁ…」
さっきから、仁王がお皿に盛られたクッキーによく手を伸ばしていた。
「クッキー好きなの?」
「あぁ、まぁ」
おざなりにも聞こえる返事。
「美味しいよね。クッキー」
フォローではないけれど口を挟めば、エリカは僅かばかり嬉しそうな顔になった。
「よかったら今度作って学校に持って行くわよ?」
「そうじゃな…」
生返事に近い返事を返した仁王とまた目が合った。
なんでそこで私を見るわけ。
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