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土曜のスーパーは思っていたよりもすいていた。
まだ朝も早いから、親子連れをちらほら見かけるだけでレジにもあまり人はいない。
カートを押しながら、メモに書かれたものを次々と買い物かごに入れていく。
「あ、牛乳…」
うっかり忘れるところだった、今日ここへ来た一番の目的を。
いそいそと通り過ぎたばかりのコーナーへ引き返そうとして、ふと足が止まる。
あれって、もしかして…
「エリカ?」
「え?」
お茶っ葉が並ぶ棚の前に、何やら難しい顔をしたエリカが立っていた。
両手に持っている物をみると、どうやら紅茶の葉を選んでいたようだ。声をかけると少し驚いたようにこちらを振り返った。
「珍しいね。エリカがこんなとこにいるなんて」
結構家が近いので私なんかはよくこのスーパーに来ているけれど、ここで彼女にあった事はなかったからか少し違和感がある。
エリカだってスーパーぐらい来るだろうけど、ちょっとミスマッチだ。
「ちょっと葉をきらしちゃって。いつものお店まで買いに行ってる時間がなかったから、ここにあればと思って来たんだけど」
でも目当てのものはなく、見たこともない銘柄ばかりで途方に暮れていたのだという。
「だったらこれと…あ、これなんかもおいしいよ」
いつもエリカの家で出されるお茶とは違うけれど、私のお勧めを教えると、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。
わ、エリカがこんな素直に表情に出すなんて珍しい。
綺麗なその笑顔に心臓がちょっぴり跳ねた。
同性さえ動揺させるこの笑顔がミソなのか。こういうのに男はひっかかるんだきっと。
「ねぇ、よかったら透もうちに来ない?」
「え、今日は用があるんじゃないの?さっき時間がないって」
「大丈夫よ。家を空けられないだけだから、これを買ったらすぐに戻るわ」
それならと、私はお昼になったら遊びに行く約束をしてエリカと別れた。
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