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君には白が似合うから



どうせ仁王あたりから伝わるだろうなってのはちょっと思ってた。
けどこうなると、もはや言葉もない。

あたしが気付いたことで謎の探偵ごっこを諦めたのか、三人組は偶然だな真田みたいな事を言いながらしれっと合流してきた。
当然知り合いだなんて思ってない真田に紹介をされ、なんとも微妙な気分でちょっと頭を下げる。どうでもいいけど丸井何でケーキの箱持ってんの?


「遊びに行こうとしたらたまたま見かけてさ」とさり気なく隣に並んだ切原がこそっと耳打ちしてくる。

たまたま?ふーん…。
仁王へ視線を投げたけど、やつは口を尖らせピヨッと鳴いた。…ワケが分からん…。

入院中の真田の友人というのはどうやらテニス部の人らしくて、四人ともよく知っているらしく、なら全員で本を選ぶかってことになったけれど、ものの数分で各々がそれ絶対自分の趣味でしょって言いたくなるところに散っていた。


「すまないな。少々騒がしいかもしれん」


うん、その辺はよく知ってる…。
真田にノーコメントでへらりと笑い返して、あたし達だけでも真面目に探そうと文庫のコーナーに向かった。

同じテニス部なら結構本読んでそうだったから柳君でも良かったんじゃないかと思ってたら、どうも柳くんとその入院している幸村くんて人はだいぶ本の好みが違うらしい。それでも無理言って選んでもらっていたけれどそろそろネタ切れなんだそうな。

聞けば聞く程難易度あがってくんだけど。しかも詩集をよく読んでるなんてあたしともテイスト違う。おしゃれな本とかわかんない。
ちなみにとその人の趣味を聞いてみればガーデニングなんて言われてもう完全に迷子だ。聞く限り全然テニス部っぽくないんですけど。女子なのかな。でも丸井は幸村くんって呼んでたしな…。

悩んでいると何か手にした仁王が通路の端っこからこっちを見てくる。いや、それ絵本だし…。しかもどう見ても赤ちゃん向けだし。幸村くんて人そういうの好きなの?絶対違うでしょ。
丸井は丸井で見ろよこれ!!って嬉しそうにお菓子作りの本を持ってきた。それたぶんあんたが欲しいやつだ。


「真面目に選ばんか!!!」


やはり落ちた真田の雷に耳を塞ぐ。
頼むから。本屋では…お静かに。


「やはり難しいな」

「そうだね…」


いろんな意味でね…。らちが明かない。こうなったら、


「ごめん真田、完全にあたし基準で選ぶね」

「あ、あぁ構わないぞ」


ちょっと驚いた風の真田を引き連れ、今まで読んだ本の記憶を全力で掘り起こしながら棚の本をざっと見渡す。

もう女子でいこう。ちょっと病弱な感じで文化部で自然が好きで繊細そうだけどしっかり芯はある感じの女の子のイメージで。そういえば丸井が美人とか言ってたな。なんか頭の中に白い女優帽でワンピースの儚げなお嬢様が誕生したんだけど…まぁいいか。そんな子にお勧めするなら、えーと


「こんなのどうかな」


見せたのは音楽を題材にしたミステリーだ。あまり知名度はないけれど、ピアノを習っていたことがある人には真っ先にお勧めしたいぐらい演奏の表現が具体的で臨場感がある。ミステリーとしても意表をついてくるので面白いんじゃないだろうか。


「む。良いかもしれんな。クラシックはよく聞くと言っていた」

「ほんと!?やった!」


良かった、この方が断然選びやすい。よく本読む人らしいから定番は外してあとは文章が繊細なやつとか…


「あ、真田こっち、いいの思い出した!」













とりあえず真っ先にコミックコーナーに行ってふらふらしたあと、副部長達を探して棚の間を覗きながら歩いてたら、真剣な顔で棚を見つめている栗原茜の姿があった。
図書室といい本屋といい、本のことばっかだなこの人。


「あっちのが彼氏みたいだな」


いつの間にか真横に丸井先輩が立ってた。彼氏みたいって、


「誰がっスか?」

「真田に決まってんだろぃ」


他に誰がいるんだよと呆れられ視線を戻す。言われてみれば栗原茜の隣には真田副部長の姿もあって、二人で本を選んでる様子はそう見えなくもない。
つか柳生先輩あの二人あんまり関わりないって言ってなかったっけ?


「あいつあんなに笑えたんか」

「うわっ!?」


びびった。いたのか仁王先輩。しかも何気に驚いた顔とかしてるから何かと思ったら、なんか、めちゃくちゃ嬉しそうに笑う栗原がいた。
しかも歩き出そうとした真田副部長の腕をとって引っ張っていく。あいつあんな積極的なキャラだったっけ?


「…なぁ、栗原見たことないぐらいはしゃいでんだけど」

「ッスね」

「無駄に目が輝いとるのう」

「俺らの時と全然違くね?」

「丸井先輩は意地悪ばっかしてるから当然でしょ」


基本的に栗原が好意的な顔をすることなんてほとんどない。だいたいが怒ってるか嫌がってるか呆れてるか……改めて考えるとほんと笑わねーなあの人。

ヘッドロックをかけてくる丸井先輩の腕を叩きながら、どうせ病的に本が好きなだけなんだろーけどと内心で呟く。

その後、会計から戻った副部長に幸村部長のとは別に買っていたらしい本を差し出された栗原は目を丸くして慌てて首を振ってたけど、副部長も今日の礼だって譲ろうとしないもんだから結局受け取ってた。しかも結構嬉しそうな顔なんかしちゃって、感謝しているだかなんだか堅苦しい礼を言った副部長にまたしても笑顔の大安売りをしていた。


「…あいつ真田のこと好きなのかよぃ?」

「たぶん違うと思いますけど…どうなんスか仁王先輩」

「知らん」


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