[携帯モード] [URL送信]
6
 

画面の中には、まさにさっきの瞬間を激写したと思われる画像があった。

一枚目は斜め後ろから撮ったせいで二人の顔が重なってみえる写真。
二枚目は少しアングルが変わり、おそるおそる、恥じらうように伏し目がちで目を開く瞬間のあたしと切原が真横から。あたしなんて顔真っ赤だし…って


「なんじゃこりゃああああああ!!!」

「おっと、」


仁王の手からデジカメをひったくろうとするが、予想していたようにひらりとかわされる。


「既成事実っちゅーやつじゃ」

「ふざけないで!こんなの詐欺よ、偽造もいいとこ!こんなとこでカメラワークの腕なんて披露しなくていいから!」


決定的瞬間こそ写ってないものの。一枚目はそれらしく見えるほどばっちり顔が重なっている。しかも握られた手までしっかりフレームに入れてある。

これどうする気?まさかアルバムにしまってとっといてねってわけでもないだろうし、これは十中八九、ほぼ100%間違いなく


「こんな決定的瞬間撮られといて、付き合ってませんってのはないよな」


例のごとく、悪魔のような笑みを浮かべる切原。ものすごく、嫌な予感。


「協力できないってんなら、この写真使って全校生徒に言いふらすまでなんだけど、どーする?」


ふざけんな、まじでふざけんなこいつら
ってかシャッター音しなかったじゃないそれ。改造したわけ?それもう犯罪に片足突っ込んでるじゃない。

震えるあたしの肩を、にやにやしながらリンゴ野郎が叩いて来る。


「ここに来た時点でお前の負け。諦めろ」


これは夢。誰か夢だと言って。じゃないともうあたし…。あたし、握られた弱み取り返しに来たはずなのに、なのに何これ…。もうやだホント…。


「お前さん、押しに弱いタイプじゃな」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」


なに、今なにか言った?聞こえない、聞こえてないよ。
結局ノート取り返せてないし。平和な学園生活も守れてないし。もう絶望しか見えないんですけどこれ。

床に手をついて打ちひしがれるあたしの前に屈んだリンゴ頭が、そういえばと顔を覗き込んでくる。


「お前、名前は?」

「………いえ。…名乗るほどの者じゃないんで」


それじゃ、と立ち去ろうとしたらまたしても襟首を掴まれ、どこからか引っ張り出されてきたパイプ椅子に座らされた。まるで取り調べだ。

あぁそうだ、今日の夕飯はカツ丼がいいな…。

なんて逃避を図ってみるが、それすら許さないほどの視線があたしの上に降り注いでいる。

もう、逃げ道は、ない…。


「………栗原茜、です。…よろしく」


よくよく考えれば、よろしくするようなことは何もなかったはずなのだが。
観念したあたしは果てしなく遠い目で、とりあえず柳生にゴルフは似合いすぎだと、そう強く思った。





to be continue...


[back]

19/19ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!