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なんで、どうして居場所がばれたんだろう。
やっぱり昨日一晩かけてあたしがたどり着いた答えは間違っていなかったらしい。
ヤツは悪魔だ。
昨日のあれはやっぱり「契約結べよ」みたいな言葉で、やっぱりあたしはこのままなし崩しに契約結ばされて、ゆくゆくは魂を持って行かれちゃう運命なんだろうか。
昨日は逃げ切ったけど、今日はそうもいかないらしい。相手もかなり警戒してる。きっと立った途端に取り押さえられたりしちゃうんだ。
残念なことに、悪魔を振り切って逃げられるだけの脚力が自分にあるとは思えない。
逃げるという選択肢は消えた…。
「お願いですから魔界にお帰り下さい」
思い切ってお願い作戦に出るが、「は?何言ってんだてめぇ」みたいな視線が飛んできた。
大人しく帰ってくれる気はさらさらないらしい。
こうなったら、戦うしかない。
あたしはぎゅっと拳を握って、密かに隠し持っていた例の道具を取り出した。
「くらえっ!!」
「………………」
「………………」
…あれ?
ぎゃあああっとかひいいいっとか、何らかの反応があると思っていたのにいつまで経ってもやってこない。恐る恐る目を開けば、そこにはやっぱり悪魔がいた。
「何、俺が吸血鬼にでも見える?」
「……吸血鬼じゃなくて、悪魔だもん…」
くっと噛み殺した声がする。
みれば、ヤツが肩を震わせて笑っていた。
「あのさぁ、悪魔に十字架ってきくわけ?」
机に頬杖をついて、意地悪な笑みを浮かべてくる。
「き、きかないの?」
訊き返すと、切原はあたしの手から十字架のネックレスをもぎ取った。直に触れても、奴は顔色ひとつ変えない。
「残念でした。十字架と言えば吸血鬼っしょ。まあどっちみち効かないけど」
思わずハッと息をのんだあたしに、
「ぶはっ!!」
何かが決壊したらしく、奴は腹を抱えて爆笑しだした。
消滅まではいかなくとも、とりあえず頭の配線をおかしくすることには成功したらしい。
どうやったらそんな考えに飛ぶんだよ、とか。あんたの知識って中途半端に抜けてんのな、とか。笑い声の合間にいろいろと聞こえてくるが。
「…別に、本気で悪魔だって思ってたわけじゃないから」
ただこれで、危ない奴だから関わらない方がいいって思ってくれればいいなとか思っただけで。
…ちょっと、本当に悪魔だったらいいなと思わなかったって言えば、嘘になるけど…。
笑い転げる悪魔に冷めた視線を送りながら、あたしはどうやったらこれを魔界に送り返せるか一生懸命考えた。
できれば段ボール詰めにして送り返してやりたかった。
一しきり笑うと、切原はひーひー言いながら私に視線を合わせてくる。
「昨日の話、なかった事にしてもらおうと思って来たんだけどさ」
そう言ってヤツはどこか面白そうに目を細め、
「やっぱあんたでいいや」
「な、」
何、どういうこと?
言葉に込められた意味をまったく理解できず訊き返そうとしたところ、それは割って入った大声にかき消された。
「少年〜!!」
声の主は小高先生。
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