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天才的かどうかは横へ置いておくとして、とあたしは端っこから席に並ぶ面々をちらりと盗み見る。各々が周囲の視線なんてどこ吹く風でドーナツ片手に談笑している。

いいな…仲、良いんだな…。

親しくないと言えないような冗談言い合ってふざけ合って、きっと皆本気で笑ってる。
だから、きらきらして見えるのかな。
なんか、本当に別の世界にいるみたいだ。あたしとは、そもそも生きてる世界が違うんじゃないか。

ふと離れた席にいた切原と視線がぶつかった。
その口が何か言おうとするのを、拒むように目を逸らす。
いよいよ分からなくなってきた。どうしてあたしに白羽の矢が立ったりしたんだろう。
これだけ女子にモテるのならそれこそ相手なんて選び放題だろうし。

ドーナツに手をつけていなかったあたしに気付いて、丸井が信じられないものでも見たように目を瞬いた。


「なんだよお前食べてねぇの?早く食わないとなくなるぜ」

「主にお前に食われて、だろ?」

「うっせぇよジャッカル。いいから食えって、ほら」


押しつけるようにして手渡されたのはストロベリーチョコのオールドファッションだ。
甘い匂いが鼻先を掠めると、さして空いてもなかったお腹がくるると鳴った。
そうして、あたしが荷物の陰でビクビクしつつドーナツだけはしっかり食べている間も、テニス部一同はくだらない話や部活の話、そしてこれまたくだらない日常の発見などで散々盛り上がり、店を出た時にはすでにとっぷり陽が暮れていた。


「ふー食った食った!」


口の端に食べカスをつけた丸井が、満足気に腹を叩く。おっさんかあんたは。
呆れた視線を投げていると、その向こうを歩いて行くうちの制服が目に入った。

うわ。

慌てて身を隠したあたしを、丸井が不審者を見るような目で見てくる。


「何してんだお前」

「ちょ…いいからそこ動かないで」


訝る丸井を盾に窺い見た先には、恵理子と千春がいた。
お茶って言ってたのに、こんな遅くまでいるなんて。
ハラハラしながら二人が行き過ぎるのを待つ。楽しそうに何事かを話す二人は、ほどなく人波に紛れて見えなくなった。


「…話してないんだな、俺達の事」

「友達なんだろ?だいたい一緒にいるし」

「……そうだけど…」

「ま、いいけど」


切原も丸井も、当たり前に話してると思ってたんだろうか。
罪悪感が容赦なく背に刺さってくる。友達は友達…だと思う。だけどこういうこと話すのは…怖い。


「ま、そんな簡単に打ち明けられなくて当たり前だよな。学生生活かかってるし」


ジャ、ジャッカル君…なんていいやつ。

そうこうする内に場は解散の流れになり、結局最後まで特にあたしが居なければいけない理由は見当たらず、どうして今日呼び出されたかも分からずなんだか腑に落ちないまま…ってちょっと待って、解散!?


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