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ケータイの画面を確認すると『部室棟前』との簡潔すぎて困るメールがきていた。

校舎を出て見上げた空は、日が落ちかけなのと雲が出てきてしまったのとで汚い暗灰色に見えた。まるで夕焼けに刷毛で薄墨を何重にも塗りたくったみたいだ。
とりあえず指示通りに部室棟まで行くといつもの面子が揃っていた。
切原、丸井、柳生にジャッカル、仁王。
さすがにこんな時間だからか辺りにはギャラリーの姿もない。他の運動部員も部室にいるか帰るかしてしまったんだろうか、下りはじめた夜の帳に包まれつつある部室棟は何だかひっそりしていた。所々の窓に明りは点いているものの、人の気配は遠い。

近づくあたしに気付いて切原がこっちこっちと手招く。その様子をどこかで見られてやしないかときょろきょろしてしまう。


「おせーよ」
「即行で来ましたけど」


つくなり不満を口にした切原に無茶言うなと内心で毒づいているとジャッカル君が呆れた声を出した。


「赤也、お前さっき大声で忘れてたって叫んでなかったか?」

「あ、ちょっとジャッカル先輩それはバラさないで」

「…切原。あんたそれでよく遅いとか言えたわね」

「…スンマセン」


珍しいことに切原が小さくなった。その背に丸井がタックルよろしく取り縋る。


「何でもいいから早く行こーぜぃ。腹減り過ぎて限界!」


何で呼び出されたのかと思えば部活帰りの買い食いか何かだろうか。そんなのに同行してもなぁと思いつつも、口に出せないまま。ぞろぞろ移動しだした面々について行く。
そういえば、前を行く頭の中にあの帽子が見当たらない。


「真田は?」


確かグラウンドを走っている時には居た筈のクラスメイトの名前を出せば、呻くような声がした。見れば、まだ離れていなかった丸井の重みに負けて若干のけ反ったままの切原が「病院」とだけ答えた。


「えっ、具合悪いの?」

「見舞いだよ」

「…そう」


なんとなく空気が重たくなった気がしてそれ以上は聞くのをやめた。


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