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「なんで仁王先輩が一緒なんスか?」

「迷子になっとるみたいじゃったからのう」



連れ立って姿を現したあたし達が予想もしない組み合わせだったからか、きょとんと頭の上にクエスチョンマークをいくつも浮かべた切原に、仁王はなにくわぬ顔で返事をしてみせた。


本当に切原はあたしを待っていたらしい。それもなぜか有名な告白スポットの木の下で。


ふと気がつけば、切原の手にはしっかりお昼ご飯のパンが握られていて、ちょっとずるいと思った。あたしは購買に辿り着くことすらできずに連行されて来たというのに。


そしてどうでもいいが、仁王と話している切原を見ていると、
切原って敬語使えたんだ…。と、ちょっと感銘を受けてホロリしそうになった。

だって記憶にある限り敬語を使われた覚えなんかない。
上級生に敬語も使えないとか、バカ?バカなの赤也くん?とかいろいろ思っていたのがばれたら絞め殺されそうだ。年上年下以前にきっとこいつは女の子の扱いってもんがわかってない。


でも敬語使えるくせに、それをあたしに適用しないってのはどういう了見なんだ。




「迷子…」

「って、ちょっと切原、何よその憐れむような目は!迷子じゃないってば、購買に行く途中だったの!」

「ほお、それは悪かったな」



弁解すれば、隣からそれはそれはわざとらしい返事が返ってきた。


キッと睨み上げた彼は底の知れない笑みを浮かべていて、余計にあたしの神経はささくれ立つ。


腹いせにずっと掴まれていた手を振り解こうとするが、今までどんなに振り回しても取れなかった手は腕を振り上げた瞬間にいとも容易くはずれて、そのまま勢いよく空振った。

こ、このやろう…!

何度も逃げないから手を放してと願い出ていたのに、結局ここに来るまでにその願いが聞き入れられることはなく、そして挙句の果てにはこの扱い。


手を引かれて廊下を歩いている間、視線で殺されるかとさえ思ったのに。

綺麗なお嬢さんたちの視線が容赦なく突き刺さって、「何、あの豆ダヌキ」とか「仁王くんに触らないでよ」とかあることないこと聞こえてきそうで。正直、生きた心地がしなかったのに。

せっかく今まで目立たないよう地味に生きてきた努力がパーになるとこじゃないか。



「スポットライトなんか浴びたくもないんだから!」

「何の話じゃ」






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あきゅろす。
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