[携帯モード] [URL送信]
The thing which the moonlight leads(金廉)
※パロ




「ん、痛っ、き、にぃ」


現在時刻、真夜中の午前2時
今俺は金兄の部屋にいる
そして


「は、っ痛い、痛っ、や、め」
「……」
「っ、だ、からっ…!」
「っ」
「痛い言うてんやろぉおぉおお!!!」
「痛ぁ!!」


俺が突き飛ばし見事に箪笥の角に頭をぶつけた金兄は普段の彼と少々違っている所がある
そうそれは


「兄ちゃんを突き飛ばすとはどない神経しとんねん!!」


赤い目に


「うっさいわ!!痛いゆうとんやから止めや、アホ!」


鋭い牙


「アホ言うなや!えぇか、俺は今食事中なん!お前は黙って俺に食べられておけばいいんや、このアホ廉!」




そうです、俺の兄は吸血鬼でした




「もう嫌やぁあぁああぁああぁ!!!!」
「いきなり耳元で叫ぶなや!」
「うぉう!いつの間に目の前に来たん!?というか、近っ!」
「当たり前やろ、食事するんやから」
「まだ飲むん、俺の血!?」
「まだ腹五分目位や」
「もう十分や、っあ」
「…黙ってろや」


金兄は再び俺の首筋に牙を立て、血を飲み始めた
兄の吐息を耳元で感じながらも俺は少しだけ開いていた襖から漏れる月明かりを見ながらついこの間の事を思い出していた


そういえば金兄の正体を知った日も確か満月やったっけ…


俺が金兄の正体を知ったのはついこの間
真夜中にふと目が覚めてしまった俺はもう一度寝ようと思いつつも中々寝付けずにいた
その時ふと頭を過ぎったのが最近新しい曲を作るため夜遅くまで起きていると言っていた四男の言葉
このまま寝れずに悶々としているより兄が弾く心地良いギターの音色を聞いているほうが断然いいのではないかと
思い立ったらすぐ行動な俺は兄の部屋へ向かう


「綺麗な満月やなぁ」


兄の部屋に行くまでの廊下は月明かりで照らされていた
いつも歩いている場所なのにとても神聖な場所のように感じる
そんな普段の俺じゃ考えもしないような事を考えていたらやはり明かりのついている兄の部屋についていた
しかしギターの音色は聞こえない
休憩でもしているのだろうと思いつつ、普段何回も注意しているのにも関わらず何も言わず勝手に部屋に侵入してくる兄にいつもの仕返しだと、声もかけずに一気に襖を開いた


しかしその選択がいけなかった


「……え?」


俺の目の前には何故か血だらけの金兄と


「…廉、造」


志摩家に仕えているはずの女の人が血だらけで横たわっていた


「え、えっ、い、一体これは、何、…」
「廉造…」
「まさか、悪魔…、ちょ、な、何してん…、きゅ、救急車呼ばな!」
「廉造っ!!」


俺は救急車を呼ぼうと走りだそうとすると、金兄に名前を呼ばれ思わず立ち止まる


「廉、大丈夫や。俺もこの人も別に怪我しとる訳やない」
「な、何言うとん!?二人ともそない血だら、け……
「……廉造?」


怪我をしていないという兄の姿をよく見てみると確かに怪我はなさそうだ
だが、いつもの兄とは少し違っていた


「金、兄…、その目、真っ赤やけどどないしたん…?」
「………」
「それにその牙……」
「…廉、もうお前なら分かるやろ?」


確かにもう俺は分かっていた
昔、父に教えてもらったその赤い瞳に鋭く尖った牙を持つ者、それは……


「…吸血鬼」
「おん。そうや、俺はその吸血鬼や」


衝撃な事実
思考が纏まらなく少し放心してしまっている俺と血だらけの金兄の間に沈黙という微妙な雰囲気が流れる


「廉、お前吸血鬼になるのはどういう奴か知ってるか?」


沈黙を破ったのは金兄だった
そう、俺の纏まらない頭の中でも唯一この事が気になって仕方が無かった
もし金兄が吸血鬼なら俺と金兄は兄弟ではないという事になってしまう
だって、吸血鬼になってしまうのは


「……吸血鬼の血筋やろ」
「そうや吸血鬼は吸血鬼の血筋でしかならん。けど俺はちゃんと志摩家の血筋や」
「…どういうことや…?」


ごくんと唾を飲み込む音が響いた


「祓魔師になりたての頃、仕事中に吸血鬼に噛まれてん、俺」
「!?で、でも吸血鬼に血吸われてもぶっ倒れるくらいで吸血鬼にはならんやん!」
「まぁ、なんというか不幸に不幸が重なったちゅーことなんや」
「……?」


俺が怪訝そうな顔をしながら金兄の顔を見つめた
金兄は頬をかきながら再び話始める


「俺らが退治しに行ったとき、調度吸血鬼同士で血飲みあっとるとこで、つまりお食事タイムやってん」
「おん」
「それでたまたま牙に吸血鬼の血ついたままの吸血鬼に俺が噛まれてしもうたん。体内に吸血鬼の血が入ってしまったら吸血鬼になってしまうかもしれん、やからすぐ治療してもらったんやけどもう遅かったんや」
「……柔兄達は知っとるん?」
「勿論や」


つまりは自分だけが知らなかったという事か
その事実にすごく驚いたが、しかし同時に悲しかった
何も言ってくれない、相談もしてくれない、確かに俺は金兄の弟で頼りないけどすごく疎外感を感じるしそれがすごく辛いなと思いふけっていると視界に血だらけの女性が見えた


「そ、そうや!この人助けな…!」
「大丈夫や、別にどうもしとらん」
「どうもしてるやろ!!血だらけやん、この人!」
「こいつはただ輸血パック被っただけや」

「は、い?」


兄いわく満月の夜になると吸血鬼の力が強くなりどうしても血を飲まないと喉がカラカラで死にそうになるらしい
かと言って人の肉に被りつくという行為などしたくもないから満月の夜は輸血パックを飲んで喉を潤していた
しかしこの女性はまだ志摩家に仕えて間もないらしくここが金兄の部屋だと分からなかったので、真夜中に電気がついている部屋を見たこの人は電気の消し忘れだと思い襖を開くと、中にはタイミングよく金兄が輸血パックを飲もうとしている姿
それでこの人は金兄の気がおかしくなったのだと思い、輸血パックを飲もうとする金兄を止めようと輸血パックを奪い取ろうとしたが金兄にとってはそれは大事な食料
渡すもんかとした力んだ瞬間、おもいっきり輸血パックを握ってしまい血が一気に飛び出した
血だらけになった女性は自分の姿と同じく血だらけの金兄の姿を見て気が動転してしまい倒れてしまった所に今度はタイミングよく俺が入ってきたという事で


「まぁ普通祓魔師でもない一般人が血だらけの姿見たらぶっ倒れるわな」
「やろ?だから俺は悪ない」


確かにまぁそうだが、確実にこの状況を作り出したのはお前やろというツッコミは胸の内に秘めておく
今俺が気になっているのはただ一つ


「金兄、血どないすんねん」


そう、飲むはずだった輸血パックは今や畳やら布団やらに飛び散ってしまっていて飲めるもんじゃない
自分で自分の血を飲むというのは何と言うか考えがたい
するとふと、視線を感じた
その先を見ると俺を見つめている金兄

……いやな予感が…


「廉造、血ぃよこせや」


やっぱりぃいぃいいぃい!!!!


「い、嫌や!」
「えぇやろ、減るもんやないし」
「確実に色々と減るわ!!」


絶対嫌だ
後ろへ一歩下がるとじりじりと一歩近づく兄
金兄は俺の背中が壁につくと一回にやりと笑った後、一変し眉尻を下げうるうるとした目をこちらへ向けた


「廉造ぅ、お前は俺を見捨てるんか…?」

「い、いや、そういう訳やないけど…!!」
「お兄ちゃんお腹へっとるん、廉、ちょっとだけやちょっとだけでいいんよ?」


まて、落ちつけ、俺
これは演技だ、目の前にいる悪魔いや吸血鬼やけどの計算や
やけど


「廉造ぅ……」


この捨てられた仔犬みたいな顔はなんや…!!!
計算、計算、計算……あぁ…!!!


「……ち、ちょっとだけやで」
「では、いただきます」


金兄は先程の捨てられた仔犬みたいな顔を一変させ元のニヤリとした顔に戻り、俺の首筋に噛みついた


「っつ!痛っ」


激痛が俺の首筋に走る


「っ、痛、、金、にぃ」
「…ん」
「はっ、あ、やっ」


金兄の綺麗に染まった金色の髪が顔にあたりこそばゆい
しかしそれと同時にすごく温かく感じる
なんかポカポカとしてきてすごく気持ちいい


「ん、ふぁ、あっ!」
「……ごちそーさまでした」


牙を俺の首筋から抜き、その痕に軽くキスをしてから金兄は顔をあげた


「お前、今の顔超エロいで」
「なっ…!!!」


このアホと言おうと寄り掛かっていた壁から離れようとしたら、思った以上に体がいうことを聞かず、膝から倒れそうになる
しかし、畳とこんにちはすること無く、気付くとと俺は金兄の腕の中にいた


「動くなや。今結構吸ったんや、かなりの貧血状態やで」
「…ちょっとだけ言うたやん」
「ちょっとだけしよ思ったんやけど、お前血かなり美味いねん」


最高、と吐息混じりで耳元で囁かれる
普段あまり聞かない兄の低く甘い声
顔がほてっていくのが自分でも分かった


「廉造」


またあの声で囁かれる


「なっ、なんやっ」
「また血飲ませてや」
「お、って、えっ!?い、嫌やわ」
「お願いや、お前の血美味すぎてもう輸血パックなんてまっずいもん飲めへんて」


思わず、イエスと返事を返してしまう所だった
危ない危ない。
だがしかし、こう真剣な兄の顔とあの甘い声にほだされてしまったのか俺の返事は


「今度一回だけ、やで」


イエスだった


「流石俺の弟や」
「あ、当たり前やろ!!」
「ではそんな俺の可愛い弟には今度褒美をやろう」


そしてまた俺の耳元に唇を近付け囁く


「……今度はもっと気持ちよくさせてやるわ」






と、この間おきた事だが長い回想に至っていると飲み終わったのか俺の首筋から牙を離して口についた血を拭っている金兄がいた


「ほんまお前の取り柄は血が美味いとこやで」
「他にもええとこいっぱいあるやろ!」
「まぁ、その快感に弱いとこも可愛いとこやな」
「…な!」


ニヤニヤと俺を見る金兄
おもいっきりこの顔を殴ってやりたいそう思ったが血吸われたばっかで動けない俺をいいことに金兄は俺の頭や頬を撫でたりしてくる


「でも気持ちよかったやろ」
「食べられてしまう動物はこんな痛みを与えられながら殺されていくんやなっと思ったわ」
「俺はお前を殺したりはせぇへんわ」


今まで頭や頬を撫でていた金兄はぎゅっと俺を抱きしめる

あぁ、この温かさ好きやわ

俺は金兄に抱きしめられるのが好きらしい
今は素直にすべてを預け、彼の胸に頭を擦り寄せる


「普段からこう素直なら可愛えぇのにな」
「……うっさいわ」



そんな俺らの姿を襖の間から差す月明かりが照らし出していた




The thing which the moonlight leads



「また血吸わせてな」
「……おん」





[*前へ]

3/3ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!