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The significance of being(燐廉)

夢を見た
小さい頃の夢を
そして思い出した
あの時の自分の無力差と自分の存在価値を


「おーい、志摩ー」
「へ?」


気付くと目の前には誰かの手が上下に動いてた
その手を辿っていくとそこには奥村くんの姿


「待たせてごめんな!雪男の奴が長々とお説教するから遅くなった!」


ニカっと笑う彼を見て、心が癒される


「全然大丈夫やで。お帰りなさい奥村くん」


そんな自分も笑顔で返す。
しかし目の前にいる彼は怪訝そうな顔をして俺の顔を覗き込んでくる


「…えーと、どないしはりました?」
「何隠してんだよお前」
「別に何も隠してあらへんで」


無駄に勘のいい彼は覗き込む行為をそのままどんどん近付いてくる
彼が近付いてくるということはすなわち自分はどんどん後ろに下がっていく
そして後ろは無限にある訳ではないので必然的に壁にぶち当たるということで

――ダンッ


「今日のお前いつもと違うんだよ」


今、俺は壁を背に奥村くんの腕と腕の間に挟まれ逃げられない状態であったりする


「…ほんまに何もあらへんで?どないしはりましたん急に?」
「どうしたのはお前の方だろ。今日の朝から変だぞ。いつも以上に笑顔は嘘っぽいし、勝呂とかにもなんかよそよそしいというか」


本当に彼はよく自分の事を見ていてくれる。
坊にも子猫さんにも気付かない事にいち早く気付いてくれる
それだけで何だか幸せな気持ちになった気がした


「ほんまに何にもありませんて」
「嘘ついたって分かるんだからちゃんと言え。俺には言え」
「なんでそこ俺様なん…」
「俺が燐様だから」


プッとその台詞に笑うと上から笑うなよっと声が聞こえる
その声と同時に頭の上にポンポンと頭を撫でるような感覚
そして、ふわっと温かい温もりに包まれる


「奥、村くん」
「嘘つくんじゃねぇ。我慢すんじゃねぇ。無理する必要は無いんだよ。お前には俺がいんだからよ、だから俺には」

―――全部、全部のお前をさらけ出して


先程より強く抱きしめられる
こうされてしまうと彼には全てを喋ってもいいのかなとか思ってしまう
これは、この思いは一生誰にも言わないとしていたことなのに

「……夢を見たんよ」
「夢?」
「おん。小さい頃の夢を」


それは俺が小さい頃、坊や子猫さんと遊んでいた時下級悪魔に襲われた
俺達はまだその頃下級悪魔さえ倒す力なんて持って無かった、だからひたすら逃げました
まぁ子供が精一杯逃げたってそんなのはただの悪足掻き
しかも最悪のタイミングで行き止まりに逃げ込んでしまって、逃げ場が無くなってしまったってどうしようとなっていた時、俺は悪魔が坊を狙っていたのに気付いて俺は危ないと思って坊の前に立ち塞がったんです
まぁ見事に悪魔に攻撃された俺は傷だらけにくわえ骨折
その数分後に祓魔師がやってきて、そこには俺のお父もいて俺を見た瞬間ビンタ食らわせてきましたよ


「……なんで傷だらけのお前を叩いたりすんだよ?」


静かに話を聞いていた奥村くんが尋ねてくる
俺は軽く笑いながらその質問に答えた


「俺が志摩家の人間だからや」


親父は俺にこう言った
『坊に傷負わしてたらどない責任取る気なんや…!坊が怪我しはらなかったからよかったもんの…』
無傷の坊と重傷の俺。
親父は実の息子に対して何の心配もせず、その場を去って行った


「確かに俺自身に力が無かった事に対して悔いりましたわ。けどそれと同時に俺の存在価値なんてこれっぽっちもあらへんのやなぁって実感してしまいましたけど」
「…志摩」


奥村くんはまた俺の事を強く抱きしめてくれて、俺も知らず知らず彼の背中に腕を回していた


「俺にとってお前はこの世で一番大事な奴だ」
「……」
「お前の存在が無くなってしまう事があったら多分俺はこの世で生きられねぇ」
「…奥村くん」
「だからそんな自分に存在価値が無ぇなんて言うんじゃねぇ」

彼は本当に優しい人だ
悪魔だという事を忘れてしまうくらい
だから今はそんな優しい彼に甘えてもいいだろうか
俺はそっと奥村くんの肩口に顔を埋める
優しい彼はそっと俺の頭を撫でてくれた


「……あんなぁ奥村くん」
「ん?」
「俺、奥村くんのそばにいてえぇの」
「当たり前だろ」
「もう離れんかもよ」
「俺が離さねぇよ」


肩口に埋めていた顔をあげると目の前には微笑んでいる彼
それにつられて俺も微笑んでいた
貴方は俺の頬に手を添えながら俺に優しい誓いのキスをした




The significance of being
(存在価値)
貴方のおかげで存在出来る



(そういえばずっと俺の事見てはるって言うてはりましたよね)
(とりあえず授業中はずっと志摩の事見てるよ)
(…ほんまですか?)
(ほんま)
((もう明日から授業集中出来へんやないか、奥村くんの阿呆))










―――――――
初燐志摩。
なんか暗い話になってしまった…
そして思った以上に志摩くんがデレた
そして京都弁分からん

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