おもいびと
◇断罪3
海斗は勉強で忙しい。
おれも部活で忙しくなった。
しかも、海斗に倣って予備校にも通い出したからハンパない。
……と言うか、おれの方が部活をしているぶんさらに忙しい感じがして。
海斗とは、夜遅くに逢っていた。
でも、あまり遅くなると翌日に響くから。
短い逢瀬を繰り返して、おれは当然のように海斗と快楽を共にしていた。
声を圧し殺して。
痕跡を残さないように気遣う行為は不自由で。
だからこそ、追い詰められた背徳感から来る興奮は例えようもなくて。
おれは、海斗との行為に溺れていた。
けれど、海斗は迷っていて。
おれを抱いてはくれない。
海斗はおれを受け入れていながら、おれに触れようとはしなかった。
それが、たったひとつのペナルティであるかのように。
それとも、守るべき境界線なのか。
海斗の中で、譲れない何かがあるのだろうと思いながら。
おれは、素知らぬふりをして、海斗を抱き続けた。
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