おもいびと
◆渇望17
「──海斗」
シャワーを浴びていると、陸はおれの胸に抱きついてきた。
勢いよく降り注ぐシャワーの下で、陸は頭からずぶ濡れになってゆく。
「石鹸……目に入るぞ」
顔を覆ってしまった髪を撫で上げると、陸はゾッとするほど艶めいた表情を持ちあげておれを見上げた。
おれは、抗えない。
この顔で。
この身体で。
この状況で。
誘惑されて。
誘われるまま。
おれは、熱く色付く唇にキスを落とした。
雨のように降り注ぐシャワーの下で、おれは陸の細い身体を抱いて。
深く、深くキスを交わして。
それまで、一方的だったキスが。
陸が応える事によって、違うものに変わっていく。
熱く、柔らかい舌が、弾力を持っておれに絡み付いて。
唇に吸い付き、舌先でおれを舐めて味わう。
おれは、瞬時にひどく興奮させられて。
貪欲な行為で欲情して、淫らな刺激にのぼせ上って。
そんな自分の反応に狼狽してシャワーを止めた。
冷静になれ
おれは陸に何をしてるんだ
おれはおれに自問して、陸を抱きしめる手を緩めた。
突然離された陸は、何が起きたのか分からない様子で。
ただ、そこに佇んだまま、動揺するおれを見つめていた。
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