おもいびと
◆渇望7
死ぬくらいなら、せめて寝顔だけでも見ておくか…………
深夜過ぎに帰宅した日は、必ず陸の部屋に立ち寄った。
陸は零時前には必ず眠る。
背を伸ばしたいと言う陸に、母は『寝ろ』とだけ助言した。
陸は素直だからそれを実行している。
おれもたくさん『寝て』きたから背が伸びたのか、高校入学時には180を越していた。
室内は暗くない。
陸はいつも常夜灯をつけて眠る。
静かな寝息がガキの頃と変わらなくて、ベッドの中でも行儀がいい。
そして、ひげもニキビもない可愛い寝顔にキスして。
愛しい存在に、安心をもらっていた。
そんな夜這いの繰り返しの中で、おれは不意に、机の端に掛けられたハンガーに気付いてしまった。
なぜこんな所に……と訝しい。
近寄ってみると、そこには一枚のパンツ。
色々と考えてみたが、やはりこれは例の『アレ』か……と、予想できて。
どうしてなのか、理由が分からなかった。
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