おもいびと
◆僕らのキセキ2
初めて会ったしわくちゃの猿みたいな弟は、母の腕に抱かれて、生まれたての癖にがっぷりと乳に吸い付いていた。
「この子、おっぱい吸うの上手だわ」
少しだけ疲れたような、それでいて幸せに満ち足りている母の何気ない歓びの言葉は、思春期になってからのおれを悩ませる事になる。
その時はただ、自分は保護されるだけの立場から、保護する立場に変わったんだな……と、ガキの癖に妙に人生を悟っていた。
オムツもまだ取れていないガキが、ホント……笑わせる。
大切なものが出来たと感じていた。
神様が宝物を下さったのだと母が笑っていた。
あなたもこの子にとって、大切なひとなのよ……と付け加えられた。
昨日まではおれのものだった乳を、その日からはコイツに譲ってやった。
おれからの最初の誕生日プレゼントだった。
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