おもいびと
◇WAY OF LIFE6
熱が出た。
海斗に残してもらった痕が熱を持って脈打つように痛む。
高い熱は、自分とは違う何かに侵入されて、それと戦うための体の反応なんだって聞いた事がある。
戦った後には、それらを自分の中に摂り込んで、ふたたび戦うための力にするんだ。
海斗が残した痕が自分のものになる。
海斗はおれのもので。
おれの中に海斗が生きている。
熱に浮かされたまとまりのない思考の中でさえ、おれはそんな風に強く感じていた。
看病は断った。
この身体を見られたくなくて。
大切な標を穢されたくなかったから。
やがて、熱が引いて痛みがうすれると、傷にはかさぶたが出来ていて。
治ってしまうのが嫌だったから、かさぶたを全て剥ぎ取った。
滲んだ血が染みついたシャツを脱いで、風呂に入ったら傷口に沁みる。
痛いけど。
痛みが海斗を思い出させる。
おれは、海斗を失いたくなかった。
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