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おもいびと
◇WAY OF LIFE2









 仕度をして、チェックアウトしたホテルに背を向けて立つ、駅前のスクランブル交差点。

 信号が変わっても海斗は前に進めない。
 歩道の縁石に佇んで、旅行カバンを携える指先に力が込められている。



 二回目の青信号でも、海斗は踏み出せない。

 後ろの人がおれたちを避けて追い越して。
 剥げかけた横断歩道を渡って行く。



 まだ迷ってるの?

 おれを置いていく罪悪感から?
 それとも

 おれと離れたくないの?



 海斗。

 海斗。



 愛してる。

 海斗。



 ゆうべは嬉しかった。

 海斗の隣で、海斗に抱かれて。
 あったかい腕の中で、おれは幸せで。

 ずっとこうしていたいって思った。



 でも、おれも考えたんだ。

 海斗はおれのためを思ってたくさん考えて悩んでくれたんだよね。
 本当は寂しいはずなのにひとりで旅立つ覚悟を決めたんだよね。



 別れたいわけじゃないって言った。
 それが本心なんだって、わかるよ。
 海斗。

 おれの隣に立って。
 今はこうして傍にいる。

 けれど、これが最後の瞬間なんだって思ってしまえば、前に踏み出すのが怖い。



 そうだ。

 海斗も怖いんだ。



 こんなにも、離れ離れになるのが怖い。



 おれたちは脆くて、まだひとりでは生きられない。

 だから、強くなるために旅立つことを決めたんだ。







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