おもいびと
◆無常12
一度心を固めてしまえば、あとは自然の事で。
まるで、ずっとそうであったような在り方が不思議だ。
なのに
苦しすぎて
胸が痛い
抱きしめる程に
おれの心は
引き裂かれてしまいそうな痛みを負って
愛しくて
切なくて
悲しくて
それなのに
気が触れてしまいそうな幸福感を伴う快楽が
おれを抱き包んで離さない
────海斗
海斗が抱いてくれた痕
残して
そうしたら
いつでも思い出せるから
忘れないから
傷付けて
痕……残して
たくさん
海斗の痕残して
忘れたくないから
そう言って願う陸の肌に、おれは何度も強く吸って、噛んで、爪を立てて。
跡を残して。
苦い血の味のするキスを交わした。
体中に椿色の痣と傷を残した陸は、その胸に白い体液をまとって。
おれのためなら平気で指さえ切り落としかねない。
そんな、凄艶な情を焔のように揺らめかせるような熱を放っていた。
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