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おもいびと
◆無常10









「抱いて……海斗」

 陸は可愛い顔をクシャクシャにして泣き縋る。

 今生の別れを覚悟したような、そんな揺らがない決意を見せて。おれを真っ直ぐに見据える。

 別れるつもりはない。

 けれど、これが最後じゃないなんて、約束できるあてもない。

 証が欲しいのはおれも同じで、こんな真剣な視線を向けられては誤魔化しなんて通用しないと知ってしまう。

 おれが本当に陸を愛しているのか。

 心変わりはしないのか。

 ただ、それだけが知りたいと訴えられているようで。ならば、旅立つ前に心中立てをしなければならない。

 縋る陸の身体を引きはがすと、陸はこの世の終わりのような表情でおれに執着を見せる。



 たまらない。

 おれはこんなにもおまえに愛されていると自惚れていいのか?


 嬉しくて、我慢も限界で。涙に濡れた陸の頬に唇を寄せて囁きを向けた。

「風呂に入ってこい。おれは出かけてくる」

「どこにいくの?」

 言うや否や再び陸はおれの腕をつかんだ。



 必死なんだな。

 そんな感情を見せられちゃ余計に可愛いんだけど。



「買い出し。何も無いって訳にもいかないから」

 少しだけ含んだ物言いで返す。陸は理解できなくて困ったような顔で考えていた。

「痛いの……嫌だろ?」

 改めて指摘すると、おれの意図するところを察した陸は首まで真っ赤にしてから狼狽えた。

 思いがけない反応が意外すぎて悪戯な気分が湧いてきて止められない。

「すぐ戻る」

 真っ赤になって動けなくなった陸から離れて、おれは部屋を出た。



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あきゅろす。
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