おもいびと
◇時つ風12
翌日。
昼休みに、諏訪先輩が教室まで訪ねてきた。
呼び出されて、驚いた。
まさか自分を訪ねてきたなんて思いもよらなかったんだ。
「諏訪先輩!?どうしたんですか」
駆け寄ると、信じられない事に諏訪先輩がおれに笑いかけてくれた。
なんて綺麗な笑顔なんだろう。
「うん。昨日は本当に助かった。ありがとう」
諏訪先輩を目の前にして、緊張してる。
身体じゅうが熱くなって、顔が真っ赤になっているって自覚した。
「なんか、色々ご馳走になって……。瞳さんにも、お礼を伝えて」
「はい!」
おれが見惚れていると、諏訪先輩はまた笑顔をくれる。
その笑顔が、海斗にそっくりで。
おれはもう天にも昇るような気持ちになった。
「ひとつお願いがあるんです。いいですか?」
「なに?陸のお願いならいいよ」
おれは諏訪先輩にお願いして、海斗にチョコを渡してもらう事にした。
一日遅れだけど、それでも仕方がないし。
そもそもどうやって渡そうか悩んだくらいだし。
諏訪先輩が確実に渡してくれると言うのなら願ったりで。
『一日遅れたけど……。二次試験頑張ってください』
メッセージを託して、チョコの入った袋を先輩に渡した。
偶然だけど。
こんな素敵なメッセンジャーに依頼できるなんてよかった。
その日の放課後、海斗からメールが来た。
――ありがとう、陸。元気でたよ。頑張る。
うん。頑張って……海斗。
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