おもいびと
◆恋慕6
ベッドに潜り込んだおれたちは、互いに寄り添って抱き合った。
温かい体温が懐かしい。
触れ合う髪とか、柔らかい頬の手触りとか。
心地良くて、嬉しくて、どうしようもなく愛しくて。
おれはゆっくり深呼吸して、自分を落ち着かせるように努めた。
なのに、陸の匂いが近すぎて眩暈がする。
抱き合いながら手を繋いで。
指を絡めて。
さらに力を籠めてギュッと手を握った。
「これ……。なんか、恥ずかしい」
顔を突き合わせて、幸せに酔わされる。
陸の顔は恥じらうように赤く染まっていた。
「なんで、こんなに熱くて。胸が変な感じ……」
陸はそう呟いてから、視線を逸らすように俯いてしまった。
「おれはずっとそんな状態だった」
意外と純情な反応に嬉しくなって、ついつい構いたくなって。
絡めた指で陸の指の付け根を撫でる。
「……くすぐったい」
落ち着きなく目を瞬かせておれをチラリと見上げてから、すぐに伏せた陸の顔が困ったように眉間を狭く寄せていた。
もっとすごい事をしていたくせに、なんでこんな純情なんて見せるんだろう。
反則だろ?
「恋人つなぎ。……してみたかった」
長いまつげが震えて、緊張しているのが分かるから。
こんな反応を見せられると、もっと困らせてみたくなる。
「や……あの」
「うん?」
「──なんか、照れる」
陸はおれの胸に、恥ずかしそうに顔を埋めてきた。
寄り添いながら、戸惑いを伝える声がいたずらにおれを煽る。
やばい。
もう、可愛くて仕方がない。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!