爆音オルガスムス
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鼻歌で歌っていた最近知った曲。
ライブハウスに通いだしてから、好きなインディーズバンドの曲を何度も聞いているうちに、それなりに覚えてしまうのは当然のことで。
それを叔父に聞かれて、ちゃんと歌ってみろと言われた。
なんでそんなに厳しい顔してそんな事を言い出すんだろうと釈然としないおれは、それでもギターコードは暗譜していたから、叔父に強要されるまま、開店前のステージで独りで歌う羽目になった。
歌ったら、叔父からスタッフのシゲさんに発声を教えてもらえと言われて。
それからは、ギターの練習と一緒に、シゲさんから歌を習った。
シゲさんは綺麗な声をしていた。
ひとの声が、こんなに色を変えるものだったなんて初めて知ったおれは、発声に夢中になった。
音域を広く持つための技術。
テクニックとしての修飾譜。
アドリブと編曲。
ありとあらゆる基本と応用はおれを更に夢中にさせて。
おれの興味は、いつのまにかギターよりも歌う事へと傾倒していった。
デュオで歌うと気持ちいい。
音の共鳴が口の中の粘膜を震わせて、くすぐったくてスゲエ気持ちいい。
頭が痺れて。
ゾクゾクしてきて。
人の音楽を聴いている時よりも、ずっと、もっと、甘い疼きが持続して。
純粋に無色になれる快感を維持できた。
もっと歌いたい。
もっと聴きたい。
もっと。
音が欲しい。
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