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貴公子(幸村)
貴公子

……気品があり高貴な身分の男子

どこからどう見ても確かにそういう人


貴公子


『みんな、おはよう』

そう言って今日も爽やかに教室に入って来た彼

(きゃ〜っ!!!今日もかっこいい……)
(ホントホント!まさに貴公子≠チて感じ!)
(爽やか過ぎだよね〜!!)

クラスの大半の女の子達は彼に夢中だ…
………それだけじゃない……
おそらく校内で1番ファンが多いと思う

『冬月さん、おはよう』
『………………おはよ……』

私にだけの挨拶
大半の女子ならコロっといってしまってもおかしく無いほどの
優しい笑顔……

(冬月さん羨ましい〜!!)
(いいよね〜…幸村くんの隣の席なんて…)

影で彼をテニス界の貴公子=c…なんて
憧れている女の子は  立海以外の学校にも居るらしい

…………………でも…………私は知っている………


『…………ねぇ…ちゃんと俺に挨拶も出来ないなんて……
ふざけてるの??』


……………………彼が怖い人だという事……






彼は  立海テニス部全国制覇の立役者であり
今は  そのテニス部の部長を務める
全国で頂点と言われるトッププレイヤー……
その上
品行方正
容姿端麗
頭脳明晰……

褒める言葉が足りないほどの人物だ……

なのに  この貴公子≠ヘ……
私の前では  なぜか魔王≠ネのだ………


『かんな』

周りの人には気付かれない絶妙な声で私を呼びつける

『…………何かご用ですか?……』

『フフフ……感じ悪いなぁ〜………………
罰として今日、部活が終わるまで俺を待っててね』

『え!?そんなの急に無理だよ!』

『無理じゃない。どうせ予定はないんだろう?』

『……………で!でも………』

『話はおしまい。ホームルーム始まるよ?ちゃんと前向いて?』

『………………。』


彼はみんなが思ってるような人じゃない!!
みんな騙されている!!
……………そう思いながら恨めしそうに隣りの幸村君を見る

………また  いつもの爽やかフェイスに戻って
何食わぬ顔で先生の話を聞いている………

恐ろしい……
彼と関わってはいけない………
そう………思っているのに………
私はどうしても彼には逆らえない……



………………………………………………………

思えばそんな彼も
隣の席になったときは優しかった…

まるで天使のような笑顔で

『これからよろしくね』

……と言ってくれた彼を今でも鮮明に覚えている……

あの日……まるで魔法にかけられたように
私はすぐに恋に落ちた…………………………………




…………のに…



なぜ  こんなことになったのだろう……



………………………………………………………………



『あれ……本当に待ってたんだ』



テニス部の練習はハードだ
終わるのも他の部活より遅い

そんな中  バカ素直に待ってた私は一体……

幸村君の言葉が胸に突き刺さる…


『フフフ、そんな顔して怒らなくて大丈夫だよ?冗談だから』


…………冗談に聞こえない……

そもそも なんで 私にだけ……こんなに彼は冷たいんだろう…
嫌いならいっそ話し掛けないで欲しい……

それなら
 隣りの美少年をただ  密かに 眺める………
そんな平凡で幸せな毎日で済んだのに…………


恨めしそうに  彼を見上げる………

『……なにか喋ったら?』

『……………いえ別に……』

『やっぱり感じ悪いなぁ………何か俺に言いたい事があるなら言ってみたら?』

………にこやかな笑顔で威圧感がスゴい……
だから真田君を差し置いてこの人が部長なんだろうな……
テニス部の人達を憐れむ……

……………これはチャンスかもしれない…今しか聞けない!!

『じゃあ聞くけど……なんで私にだけこんな感じなの…?』

『……こんな感じって………どういう意味かな?』

……だから……その威圧感の事です…
私は怯みながらも続ける……

『………なんで私にだけ冷たいのかな……って…』

『冷たい?俺がかい?』

『私の事嫌いなんだよね……??』

『………!!』


……………一瞬の沈黙……

その言葉を聞いた幸村君は
事もあろうに大笑いし出した……

『アハハハハ、かんなは面白い事言うね!!』


…………全然笑い事じゃない……
私は真剣に聞いたのに………

幸村君は
相変わらず  お腹を抱えてまで笑っている………

やっぱり  この人は私の事が嫌いなんだ……
だから真剣に向き合ってくれないんだ………

そう思うと
何時の間にかポロポロと涙が出てしまった………


『……………真剣に……聞いたのに…!!』

相変わらず  涙は止まらない
それどころか怒りと悲しみでグチャグチャだ……!!

そんな様子を見ていたハズなのに
彼は余裕の表情を浮かべながら  私の頭に手を置いた

『やれやれ……ちょっとやり過ぎちゃったかな?』

幸村君は  ポンポンと優しく頭を叩いてくる

『さっきの質問の答え……教えてあげる』
『………………質問って………………』

『さっき  かんなが聞いただろう?………その答えだよ』

幸村君はそう言うと
私の頭に置いていた手を  ゆっくりと下げ
指で  やさしく………流れる涙を拭ってくれた

『まず一つ目、こんな感じなのはいつもだ』

『…………え?……』

『二つ目、冷たくした時の  かんな  の反応が面白いから』

『…ひ………ひどい……』

『で、最後の質問は………………』

『………!!』
……………………グイッと幸村君の顔が近づく

『……………嫌いなわけない…………むしろ…………………』

(…………ちゅ)

『〜〜〜〜〜〜!?』

『好きだからイジメたくなっちゃうんだよね』


そう言って
私を優しく見つめる彼は

やっぱり  貴公子  の名に恥ない
ステキな笑顔だった………




………………………………………………………………………


どこからどう見てもそういう人………?

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