[携帯モード] [URL送信]
黒砂糖(丸山)
黒砂糖


彼を何かに例えるならば… 私は黒砂糖だと思う

甘いようで甘過ぎず…
知れば知るほどコクもある

そんなアナタを知って
飽きることなく夢中なの



黒砂糖


『 ……さつき〜ッ!!』


休み時間……
今日もわざわざ隣のクラスまで
彼は叫びながらやって来た…

『大きな声で呼ばなくたって  ちゃんと持ってきたよ… ほら』

差し出したのは色とりどりの和菓子。

それを見て  目の前の彼………丸山ブン太君は目を輝かせている


『く〜ッ!!さすが老舗和菓子屋の娘!!太っ腹だぜぃ!!』

『……それはどうも』


私の気持ちを知ってか知らずか……
彼が毎日 会いに来てくれるのは嬉しい……が…
目的は  間違いなく私ではなく  このお菓子…。



………………………

こうなったキッカケは半年前…




『お前って  あの慶雲庵≠フ1人娘なのか!?』

話した事もなかったブン太君に急に話しかけられた…

『えっと……そうだけど、どうして??』

『すげー!!俺  あそこのお菓子  大、大、大好きなんだよ!!』
『そうなんだ…ありがとう……』
『いいな〜!!!いつでもあの和菓子が食べられるなんて……羨ましすぎだろぃ!!』
『…………そんなにうちのお菓子好きなの…??』
『おう!!毎日食っても足りないぜ〜』

『なら、売れ残ったモノでいいなら持って来てあげるよ!』

『…………マジで!?お前ってめっちゃくちゃいいヤツじゃん!!』




……………………と   いう事で
かれこれ半年近くこの関係が続いている…。


『………今日も最高に美味いぜ〜……幸せすぎるだろぃ…』

『よく毎日食べて飽きないね??』

美味しそうに食べるブン太君は小動物みたいで
なんだか可愛い…

『慶雲庵のお菓子はどれもしつこく無くて飽きないんだよなぁ〜
特に……この黒砂糖のヤツ!!』

『…………一応それがウチの看板商品だからね…』

『へ〜!!さすがだな!!………なぁ、さつきは食わねぇの?』
『…私はブン太君と違って部活してないからね……
毎日食べてたら太っちゃうよ…』
『……ふ〜ん…あ!!そういえば!
部活といえば明日、練習試合なんだよ〜!!
……てなわけで…差し入れシクヨロ☆ごっちそうさま〜!!』

『ええ!?ブン太君!?』


…………本当に嵐のようだ…

ブン太君には  いつも振り回されてばっかりだ…
でも……そんな所にも惹かれてしまう私はどうかしている…


『……お前もアイツに振り回されっぱなしだな』

同じクラスのジャッカル君が  呆れ顏で言ってきた

『ジャッカル君ほどではないよ…』

『ハハハ、ま、お互いアイツには振り回されるが……
明日の練習試合には来てやってくれよな』

『大丈夫!予定もないし…差し入れ持ってかなきゃダメだもんね?』

『………差し入れはブン太の照れ隠しだと思うが…ま…
俺もいつも楽しみにしているんだ持って来てくれると嬉しい』


ちなみに…と
親切にジャッカル君は試合会場と時間が書かれたプリントをくれた


『…と言うか、普通……俺にも声かけていくよな……
本当に分かりやすいヤツだぜ…世話が焼ける』

『なんか…ジャッカル君って………パートナー通り越して
お母さんみたいだね!!!』

『…………やめろ……………。』




……………………………………………………


ブン太君の試合を見に行くのは久しぶりだ

いつもは元気で可愛い彼だけど…
試合の時は 自信に満ちあふれて  ほんとにかっこいい…

そういう  いつもと違うブン太君を見ると
また  彼に惚れ直してしまう……

………なんて…思い出してニヤニヤしてしまうのを抑えて
試合の後にも食べやすそうなお菓子を選んで箱に詰めた

…ブン太君はまた  美味しそうに食べてくれるだろうな………

そう思うと、自然と足取りも軽くなり
急いで会場に向かう


……………………………………………………


ジャッカル君のくれたプリントのおかげで
無事に会場に着くことが出来た

私が到着した時には  もうアップも終わったのか
ちょうど試合が始まろうとしている時だった

『ブン太君はD2だから………もう試合が始まるかな…』

さすが   全国制覇を成し遂げた立海テニス部なだけあって
取材や……スカウト??……違う学校の人達もいるし……
ファンクラブの人までいるらしい…
会場は練習試合とは思えないほどの人混みで埋めつくされている


……近くにいると実感がないけど…
うちのテニス部ってすごいんだよね……………

……ブン太君もその1人なんてすごいなぁ…


しみじみしていると遠くにブン太君が見えた

『あ………』

ブン太君はいつもの笑顔とは違う
不敵な笑みを浮かべてガムを膨らませている

ブン太君をもっと近くで見たい……
人混みを掻き分けて出来るだけ近くに向かうが
コートに近づけば近づくほど人も多くなり……
なかなか
思うように進んで行けない

でも……無理にでも行かないと応援に来た意味がない!!

『すみません〜!!通してく、だ……………きゃあ!!!』


……………見事に転んでしまった……



………ドンッ……

それでも周りの人には私に気付かない人もいるようで…
撮影に必死な他校生や記者の人達は
足もとの私にお構いなしにぶつかる


…………………ガツッ!!………

『……痛ッ………』

…………早く立たなきゃ………
でも人混みで上手く立ち上がれない……
どうしよう………

途方にくれていると………



『動くな!!!!!』



突然大きな声が聞こえた


『あんたらの足もとにいるの…俺のツレなんだ
………………どいてくんねぇ??』


いつものブン太君じゃないような低い声…

ブン太君の声に驚いたのか周りの人達も静まり返る…

『……さつき…大丈夫か??』


ブン太君は  周りの人達を見回した後
私には優しく声を掛けてくれた

呆然としていた私は
コクコクと頷いて無事を知らせる


その様子を見たブン太君は、不敵に笑い

『………見てろ……俺の天才的妙技で……………
すぐ終わらせてそっちに行ってやるからな』




試合は
ブン太君とジャッカル君の完璧な攻撃と守備で
相手に得点も与えないほどの圧倒的な展開

………………………その後

試合は6ー0と完全な勝利で終わった




……………………………………………………………………



『………さつき!!!』
『ブン太君………お疲れ様!!すごかったね!!』

『まーな!!俺様にかかればこんなもんよ!!
……………ま…お前が心配だったしよ…』

『さっきは助けてくれてありがとう……
実は……私  ブン太君に謝らなくちゃいけないの………』


そう言って申し訳なさそうに広げたのは持ってきていた差し入れ…

……………コケた弾みとぶつかった衝撃で無残な姿になっている……



『……ブン太君……楽しみにしてくれてたのに本当にゴメンね……………』


せめてもの役に立とうと思って差し入れを持ってきたのにこの様……
情け無くて涙が出そうになる……


『…………怪我はなかったのか??』


『え!?うん、たいしたこと…………………』

『お前が怪我してないならいい』

『……でも…ブン太君のお菓子ダメにしちゃって………』


『だから!!!』


『……………!?』

『あぁ!!もうニブいヤツだな!!俺はお菓子じゃ無くて
お前に来て欲しかったんだよ!!!』


『......?…それってどういう………』

『あ〜ッ!!!もう!!!だから!!!
好きなんだよ!!お前の事が!!!』

『……………………えっ!?…………本当に!?』

『冗談でこんな事言うわけないだろぃ!?』



『ーーーーーーーーーーーー!!うれしい……!!』




………………………………………………………………………




『しっかし……じれったかったな〜ここまで来るまで……』


……試合の帰り道

ブン太君と2人で帰ろうとしている所を
テニス部のみんなに捕まり……結局みんなで帰ることに…

『……ブン太は店で手伝いしてるお前に一目惚れだったんだぜ』
『……うるせージャッカル!!余計な事言うな!!』

『そうじゃな……休み時間になるたび教室前でソワソワして…………見ていて  面倒くさかったぜよ』
『仁王はいつも面倒くさいんだろぃ!』

『丸井先輩……こんな可愛い彼女とか……………羨まし過ぎっス……!!』

『………赤也はどっかいけ』

『え!?俺の扱いひど過ぎっスよ!!』

このやり取りにみんなが笑う


『まー、  せっかくだからからかうのは明日からにして……
そろそろ2人きりにしてやろうかのー』

『…そうですね…これ以上は邪魔出来ませんね…………それでは  お二人とも気をつけて』


みんな   まだ  からかい足らない!と言わんばかりに
こちらを何度も振り返り  手を振ってくれた


『は〜………うるさいヤツらだぜぃ…………』
『本当にみんな仲良しなんだね……』

『まぁな………』

『……………………。』
『……………………………。』

急に周りが静かになって  ドキドキする…

『……やっと2人きりになったな』
『……………そうだね』
『………………………だな………
……………あ〜!!なんか腹減ってきたぜ!!』

『…………あの差し入れがあれば………ゴメンね…』


『まぁ…差し入れは残念だったけどよ………その代わり…………』


ちゅ……と

ブン太君の唇が優しく触れる




『……!!』

『今日はもっといいモン手に入れたからいいか』



……………………………………………………………………



あなたのキスは
黒砂糖より
どんなお菓子より甘い

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!