[携帯モード] [URL送信]
全速力(好敵手の女主目線)
全速力


いつも楽しそうで

いつでも全力で生きている

………………そんなアナタが私には眩しかった



全速力




優等生だとか学年トップだとか  どうでもいい………


私は…………空っぽなんだ……………




………………………………………




親に心配かけたくないから毎日とりあえず学校に行く

適当に授業を受けて

面倒事が嫌だから友達付き合いもそこそこにして………

学校が終われば  親が決めた塾に行く……………






……………………………毎日同じ事の繰り返し






一生懸命なつもりはないけど
こんな生活してたら   だれでも成績は上がる…………



私には……………テストの点が良いだけで他にはなんにもない





がむしゃらになることも
悔しくて涙を流すようなこともない



……………私って…………これでいいのかなぁ………


毎日そんな事ばかり考えていた……………





……………………………………………………………





『…………………シャーペンが落ちたぞ』





気がつかない間に落としたらしいシャーペンを

隣の席の真田くんが拾ってくれた



………………いけない

授業中なのにボーッとしていた……………





『ゴメンね、ありがとう』




何事もなかったように差し出されたシャーペンを受け取ろうとすると
真田くんは不思議そうな顔で私を見ていた




『……………珍しいな………悩み事か?』



『……………まぁ…そんな所かな………………』



『…………今は授業中だ   休み時間になったら聞こう』



『…………………え??』





真田くんは一方的にそう告げると
何食わぬ顔でノートをまとめ始めた……………




真田くんとはそんなに親しくはなかったが
隣の席になってからは世間話をする程度になった


…………………そんなに真剣に悩んでるんじゃないけど…………

真面目な真田くんは本気で私を心配してくれてるのだろう………




………………………………





『では、話を聞こう』



授業が終わると、教科書を片付け終わるよりも早く
真田くんは私の前に仁王立ちしていた………………




『えぇっと…………大した事じゃないんだけど……………』




真田くんの眉毛がピクリと動く


………………こんなに真剣に聞いてくれてるんだから

私も真面目に話そうと決めた





『…………私って………なんにもないなぁ……って思ってたの……』


『…………何もない??』


『そう…………一生懸命にがむしゃらになれることが何にもないの………』



『がむしゃらになれることがない…………』




真田くんは  眉間にシワを寄せながら
私の言う事をオウムのように繰り返す……………




『……………ゴメン…………真田くんには分からないよね??
だって…………テニスっていう夢中になれる事があるもんね……』





『…………………………。』




真田くんはより一層  眉間のシワを深めて
腕を組んだまま動かない………………………




……………………怖い顔…………



何言ってるんだコイツ≠ニか思ってるんだろうな…………











『………………放課後  予定はあるか?』




沈黙を破った真田くんから出てきた言葉は意外なものだった




『え!?…………………今日は塾が休みだからなにもないけど…………』



『ならばテニス部の練習を見にくるといい』



『真田くんたちの練習を…………??』



『俺たちは毎日  がむしゃらに練習している!!!
……………いいアドバイスが出来なくて悪いが…………
俺たちを見れば  なにかつかめるはずだ』


『……………………。』







この好意を無駄にすることは出来ず…………

放課後   言われたままにテニスコートへ向かった………




…………………………………






ポーン………………ポーン…………







ラリーの音が心地よく響くテニスコートには
私が来る頃には 人だかりができていた


…………………そういえば
テニス部のにはファンクラブがあるって聞いた事がある


この人たちがそうなのだろう…………




こんなギャラリーの中で集中出来るのかな…………




歓声をあげる人混みから少し避けて
金網越しに  覗き込む






『赤也!!!余所見するな!!!』


『へーい………………』




真田くんの声だ………………
相変わらず怖い顔で練習をしている…………




あ〜…………あの人怒られちゃったんだ…………
あんな人だかりから声を掛けられたら  ついつい見ちゃうよね………





『赤也!!!なんだその返事は!!!!』


『げッ!!すんません副部長〜勘弁してくださいよ〜!!』





…………………ふふふ!漫才みたい…………



あ、あの怒られた人    今から試合をするんだ……………






『よーッし!!今からは本気出すぜ!!!』


『いつでも本気でやらんか!!!!』


『げッ!!』






あはは…………また怒られてるし…………

ヘラヘラ笑ってたのに今度はむくれちゃった…………

あの人………コロコロ表情が変わるなぁ……





…………………………………………






………………………バシュ!!!





練習のラリーとは違う鋭い音…………

さっきまでの雰囲気から一転して
ピリピリと緊張感が伝わってくる…………



真剣なんだ………………





それに………テニスの事は詳しくないけど…………
さっきの人………………

すごい上手…………


表情もさっきまでと全然違う………………………








……………………目が離せなかった…………



私と全然違う………………


真剣で…………

がむしゃらで…………でも楽しそうで…………



恰好良くて…………









……………………………………………………








それから私は





練習試合があれば密かに応援に行き


アナタがゲームが好きだと聞いたから必死で勉強した……………







こんな事に一生懸命になるなんて………

初めは自分に呆れたけど…………………




すごく…………毎日が充実してるんだよ……………








……………ねぇ………………知らないでしょ……………








…………………………………………




塾をサボって

アナタが待つ  あのゲームセンターまで走る





やっと見つけた私の夢中になれる事






……………………………………………………



あなたのもとへ全速力

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!