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説明書(仁王)
説明書


自由奔放で掴みどころが無くて……
不思議がいっぱい


そんなアナタを理解するために説明書が欲しい




説明書



私は 今  困っている………

原因は……………1人の男の子…………




……………………………………………………………





…………ゴトッ!!




朝、私は

いつものように登校して

いつものように  みんなに挨拶しながら

………………いつものように下駄箱のフタを開けた




『………………………まただ………』






ゴトっという音と共に出てきたのは  結構な重みの不思議な箱………





『……………………???』




とにかく  箱を開けてみる…………





出てきたのは……………








『…………………お酢……………』






なるほど………ビンが入ってたから重かったのか………


冷静にそんな事を考えながら   足早で教室に向かう




でも  向かうのは自分の教室ではない





……………こんな     意味不明な事をするのはただ1人








『仁王くん!!』



たどり着いたのは3年B組


………………私を困らせる  迷惑な男の子の教室………





『おはようさん   今日も教室に来てくれたんじゃな!』


『いや………そんな嬉しそうな顔されても………………えっと……
今日も下駄箱によく分からないモノが入ってたんだけど…………やっぱり仁王くんだよね??』



『バレてしもうたか〜ハハハ…お前さんは鋭いのー!!』


『………………………はぁ………』





………ため息をついて
私は呆れた顔で  目の前の仁王くんを眺める……




鈍いも鋭いもない………


仁王くんの不思議な箱


下駄箱に入っていたのはコレで5回目………

犯人が分からない方がおかしい……







『あの〜………なんでこんな事するの………??』




『…………酢  嫌いじゃったか??』


『………嫌いじゃないけど……………
そういう事じゃ無くて………ぜんぜん意味が分からないから…………』




私がそう呟いて困った顔をすると

仁王くんは満足したように悪く笑って…………どこかに消えてしまった



………………今   出て行くって…………授業サボるつもりなのかな………







『……………やっぱり………変な人だ…………』








………………………………………




仁王  雅治



B組    テニス部    性別  男


長い銀髪で色白


よく分からない方言と言葉を使う………………不思議な人……






………………………私が分かっているのは  たった  それだけ








そもそもクラスも違って
話したこともなかった仁王くん



そんな仁王くんに 突然  声をかけられたのは  ちょうど3ヶ月くらい前………



ある日の放課後


校舎裏のネコ達と遊んでいる時だった………





『お前さん…………招き猫の伝説知っとるか?』


『え……………招き猫……………??』




突然  声をかけられ


そして ……………なぜか  そのまま一緒にネコと遊んだ









…………それがキッカケで少しずつ話すようになり……

最近では  会えば必ず声を掛け合うくらい仲良くなった







フラッとどこかに消えてしまったり
不思議な感嘆詞を使ったり
意味不明な道具を欲しがっていたり


普段から謎が多い彼………







でも…………最近の一番の謎は


………………………やっぱりこの箱………………








………最初はただのプレゼントだと思っていた




1つ目の箱の中身は   猫のシッポのストラップ





猫が大好きだと話したばかりだったので

すぐに仁王くんが入れてくれた物だと分かり教室までお礼に行った









2つ目は    ドラゴンボールのピッコロのフィギュア……………




ピッコロ好きだと言った記憶はない………

だけど前回と同じ箱に入っていたので
よく分からなかったけど一応  仁王くんのもとへお礼に行った…………







3つ目は     絵が得意だという 幸村くん作、花の絵(走り書き)



……………突然………意味が分からない……………




幸村くんと  そこまで親しいわけではないし…………

絵が好きなわけではない……………



ただ    幸村くんのファンが貴重なモノだと言ったので  貰う事に…

とりあえず幸村くんにお礼を言ったら


『俺じゃないよ?捨てたモノだから』


…………………と優しく微笑まれた…………





4つ目は …………………蛾………





箱を開けたら  うごめくモノが目に入った

私は虫が苦手だ

半泣きになりながら仁王くんのもとへ走った……








そして………………ここまで来てやっと分かった


…………………コレが   イタズラだと……………









思えば…



初めて話したあの日から
私は仁王くんに振り回されっぱなしだ………




仁王くんは自分のことを調べられたりするのが嫌いらしく

テニス部の仲間や
仲のいい柳生くんですら出身地も知らないらしい………







ましてや  仁王くんと付き合いが浅い私が

彼が一体  何を考えているのか理解出来るわけもなく…………



この箱の中身にも  仁王くんにも  悩まされているのだ………

















………………………………………………………………










『…………仁王くんって謎だよね??』

『突然どうしたんですか?』







柳生くんとは同じクラスでお隣同士

私は 箱に入っていた お酢のビンをくるくる机の上で回しながら
隣の席で読書中の柳生くんに声をかけた





『まぁ、彼の場合は謎≠ナある事が彼らしさとも言えますね』


『…………柳生くんは紳士的で………正反対の性格なのに気が合うんだね?』

『正反対だからこそ、気が合うのかもしれません』


『う〜ん…………』




光に透かすように  ビンを高く持ちあげる

…………………どこからどうみても、ただの  お酢……





『……………仁王くんと気が合いませんか?』





『……気が合うとかの次元じゃないよ………仁王くんのこと全然知らないもん………』




そう言いながらズイっと柳生くんに  ビンを渡した





『今日は  やはりお酢ですか…………フフフ……なるほど………』




『やはり≠チて………分かってたの!?』





『はい!………まぁ仁王くんとはダブルスのパートナーでもあり………
親友でもありますからね…………これくらいは分かりますよ』




『なんで!?…………う〜ん……私には  わかんない…………』




なぜ仁王くんは
私にこんなイタズラを仕掛けてくるんだろう…………



頭を抱える私を見て
柳生くんは  ビンを返しながらこう言ってきた




『………………分からないですか??』




『分からないから悩んでるんだよ!………………
………………はぁ………仁王くんの取り扱い説明書が欲しい…………』



『そんな物があったら、是非  私もいただきたいものですね』



『………柳生くんは要らないじゃん………仁王くんの考えてる事分かってるんでしょ??』


『いえいえ!普段は分からない事が多いです……
…………ただ………アナタの事に関しては…………彼はとっても分かりやすいと思いますよ?』


『……………どうして??』


『それは言えません……………仁王くんに絶交されてしまいますから』




『????』








……………………………………………………………





柳生くんと話していても仁王くんの謎は深まるばかり………



授業内容も頭に入ってこず………
気が付けば  ついつい  仁王くんの事を考えてしまっていた…………




なんで私にイタズラするんだろう

いつも  どんな事を考えてるんだろう

好きなものってなんだろう

今日もネコと遊んでるのかな




謎だらけの仁王くんに興味が尽きない………





いろんな事を考えて考えて…………


そして    あっと言う間に  もう放課後になってしまっていた……………






………………………………





『……………授業………全然  分からなかった…………』







そんな自分に嫌気を感じながら

トボトボと教室を出る…………






『お疲れさん』




『……………!!仁王くん!!』





仁王くんは廊下に座り込んだまま  左手を軽くあげて見せた





『……………今から帰るんじゃろ??』



『うん…………そうだけど…………』





仁王くんは  私に声を掛けると立ち上がり

……………私の歩幅に合わせるように隣に並んだ






『………お前さんを待っとった』





『…………………………私を??』



もちろん約束してないし
仁王くんとは  一緒に下校した事もない




『……………あ!!!また私の事からかって遊ぶつもりでしょ!』





私が少しむくれた顔で  そう言うと

仁王くんは少し困った顔をして  頭をガシガシとかいた





『…………俺は そういうつもりじゃないんだけどな…………えーっと…………………
…………………なぁ………今から 時間あるか?』



『???…………予定はないけど………なんで??』




『まぁ、付いて来んしゃい』







…………………………………………………………






私に合わせながら歩く仁王くんに

言われるがままついて行く…………







『……………………どこ  行くの??』



『秘密ぜよ』




『………………仁王くんって何を聞いても秘密≠ホっかり………
私、いまだに仁王くんの事ぜんっぜん知らないもん!!』




『…………………まぁ………そうかもしれんの』



『お酢も意味不明だし………   今日、柳生くんと言ってたんだよ??仁王くんには取り扱い説明書がいるって!!』



『………………説明書??』



『だって全然理解出来ないんだもん』



『…………俺ってそんなに分かりにくいか??』



『わかんないよ!なんで私にイタズラするの!?』



『…………………それは………………秘密じゃ』



バツが悪そうに顔を背けると仁王くんは少し早歩きになった








………………また秘密…………


仁王くんは何を考えているのか 本当に分からない…………






『仁王くんのせいだよ…………気になっちゃって………………私  ……………毎日  仁王くんの事ばっかり考えてるんだよ!?』



『…………!?』



仁王くんは普段見せないような驚いた顔でこちらを見て
立ち止まってしまった




………………私   なんか変な事言ったかな…………??








『お前さんが…………俺の事………………………………??』







『……………???

毎日のようにイタズラされたら誰だって気になるよ!!』





『……………………………なんじゃ……………………そういう意味か………』





仁王くんは、驚いた顔から  
……………今度はなんとなく元気がない顔になってしまった






『はぁ……………………』





肩を落としてため息をついて

スタスタと歩き出す




………………よく分からないけど

なにか悪い事を言ったみたいだ……



……やっぱり私には仁王くんが分からない…………









『ほら……………こっち来てみんしゃい』






仁王くんに連れられて辿り着いたのは校舎の裏

………この場所に  少し懐かしさを感じるのは仁王くんと2人っきりだからだろう







『ココって……………仁王くんと初めて話した所だね?』



『…………まぁ………お前さんと まとも≠ノ話したのはココが初めてかもしれんの』


『………………え?』



『…………それはいいとして……あの時のネコ覚えとるか??』



『一緒に遊んだネコちゃん?モチロン………………』

『にゃー』



人の気配を感じとって

茂みの影から    足元に可愛い住人が現れた

しかも一匹ではない……………親子連れだ




『どうやら  もう  あの時お腹の中にいたみたいでのー
……………………可愛いじゃろ?』



そう言って仁王くんがしゃがみ込むと
子猫達は慣れているようで   近くに集まってきた




『…………………か、かわいい〜〜〜〜〜!!!』



『来て良かっただろ?お前さんに見せたかったんよ』






子猫を優しく撫でながら仁王くんは  ふわりと笑った



………………その顔がとっても優しそうで

いつもの仁王くんじゃないみたいだった………








『仁王くんって……………意外とコロコロ表情が変わるよね』



『なんじゃい急に…………』


『いつもは掴みどころがない感じだからなぁ……仁王くんって笑ってるとなんか可愛いね??』



『……………!!!』




ニコッと微笑んで言うと

仁王くんは真っ赤になって  そっぽを向いてしまった



………………その姿も初めて見る


赤くなるのも なんだか可愛い…………なんて思ってしまった









『…………そうじゃ………………コレ…………最後のプレゼント』





顔を手で覆いながら
仁王くんは   私の手に何かを渡そうとしてきた




『最後………って……………また何かくれるの…………?』




仁王くんに手を差し出すと

コロン………と  私の手のひらに落とされる






『…………………これって……………………………』



『そこで拾った』








……………………手のひらにに落とされたのは小枝


…………しかもそこで拾ったヤツ……

意味が分からない……………








『……………私…………やっぱり仁王くんが理解出来ない………』





『ハハハ……………俺を理解するのは………簡単ぜよ』



『???』



『俺はお前さんによって変わるんじゃ』



『???』





……………………不思議な彼を理解するには

………………………………………もう少し  かかりそう…………








………………………………………………………



アナタの説明書………


私が笑えばアナタも笑う















☆後日☆



『最後のプレゼントは木≠セったでしょう??』


『なんで分かるの!?すごい!!!!!
柳生くんって やっぱり仁王くんの事 理解してるんだね!?』


(…………誰から見ても仁王くんの気持ちはバレバレなんですが………………メッセージに気づかないんですね………)


『そういえば、昨日 子猫見たんだよ!  三ヶ月くらい前に仁王くんと初めて話した場所にネコが居てね〜』


(初めて……??確か仁王くんは1年生の頃から彼女の事を……)


『柳生くん聞いてくれてる!?』


『あ!ハイ、もちろん聞いてますよ!』

(………コレは………仁王くん苦戦してますね…………
彼女は遠回しでは気づかないタイプですよ……)







シッポ→尾(お)

ピッコロ→魔(ま)

幸村画伯→絵(え)

蛾→が

酢→す

枝→木(き)                     ☆おしまい☆

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